|
アマレスの大先輩長州さんがプロレス引退を正式表明した。土俵は違っても年齢に鞭打って頑張ってきた若輩としては、一抹の寂しさがある。確かに力を基礎とするレスリング生活に年は強敵。
最後まであきらめないアキラと言われて、アトランタ五輪に挑戦していた私をマスコミは取り上げてくれたけど、本当にしんどい日々だった。最後の決戦で後輩に後を譲った時に、胸中に去来した思いは複雑だった。ここまでやったんだからという気持ちと、まだ終わりたくないという気持ちが平行線を引いたまま残っているのだ。 記者会見での長州さんの第一声は「何もないな。」だった。止める決心を説明するのは本当に難しい。体力の限界というのは、レスリングをやっていれば常に感じるもの。限界を克服しようと毎日闘っている。それを理由にすれば、自分の闘魂を否定することになる。 とは言え、一度ならずトップを窮めるとさらに挑戦を続けるモチベーションが湧かない。そこに君臨する意味を自分の内心に求め続けることはきつい。そのきつさをきつさと感じたら「引退」という二文字が浮かぶ。弱くなったわけでも、気力がなくなったわけでもない。でもその時が来た。そんな感じだと思う。 新日を離脱して、ジャパン・プロレスを旗揚げしたころ、長州さんは谷津さんたちを連れて早稲田によく来て、私とのスパーリングに汗を流した。思えばあの頃、新しい自分を見つけようと必死にアマレスにその回答を求めていたような気がする。 「ルールが全く違う二つのレスリング。でもレスリングの基本はアマレスだ。レスリングのできない奴にトップはやらね。」そんなひたむきな凄みが伝わってきた。現役バリバリの私にとって、長州力は恰好の練習相手だった。新日で第一線をはっている男が、まるで新人のようになんどもなんども組み付いてくる。凄い人だと思った。 以来押しも押されぬプロレス界のヒーローとなった長州力。彼のレスリングにはいつもアマレスへの誇りが感じられた。「ブリッジにしろ、バックを取るにしろ基本はアマレスだ。」その意味で長州引退はアマレス界にとっても一大事かも知れぬ。後継者がいない? 面倒見のいいことでも評判の長州さんが心配しているのが、愛弟子中西のプロレス。バルセロナ五輪代表からプロ転向した中西。彼の不器用さはずば抜けていた。彼とやると決められるはずのないところが、痛いのである。 アマからプロへの転向のポイントは、実は大きさよりもむしろ器用さ。受け身の取れるように決めるというプロの技には器用さが欠かせない。ウエートの重い連中が繰り出す技は計り知れないパワーがある。間違ったら本当に命取り。ジュニアクラスとはダメージが全然違うのだ。彼の原爆固めやバックドロップを見る度に肝を冷やす私なのである。 中西がバックを取った。ジャーマンスープレックスだ。観客は決まるかどうかで興奮している。だけど私は相手のことが気になる。あの決め方で投げちまった・・・ワン・ツゥーではね除けた。周りは大歓声。私は胸をなで下ろす。生きてる。受け身が取れた。 そんなわけで招待を受けても中西の試合だけは極力見ないようにしている小心な私なのだ。まさかひょっとして、長州さんが止めるの中西のせいじゃないよね。 |
![]()