NO 3: 人間の強さと弱さを教えた組長
週刊漫画サンデー5/27号

 格闘技は数々あれど、陰毛投げなる技を発明した格闘家は、恐らくあのおっさん以外にいないだろう。これでも都の西北、とある杜で教鞭をとっている私は、ある時知人に頼まれて、体育の授業の特別講師として、プロレスラーを招くこととなった。その知人とは、ドクター富家。新日プロの専属医師。そして、あのおっさんとは組長「藤原喜明」のことで、かつての新日マットで、セメントでやれば一番強いと言われていた男だ。Kumichou

 ともかく最近の若輩たちは、幼い頃に喧嘩らしき喧嘩を真剣にやってこないせいか、いざことを起こすと手加減というのができない。どのくらいの力で相手を殴れば、どのような衝撃を結果として与えるかを、「体」で理解していないのだ。これがむごきいじめや、体罰につながっているとは思いませんか?

 プロレス人気の秘密もこの辺にある。人と一戦を交えたこともない輩が、レスラーのでかい体とパンチやキックの大げさぶりに、自らの代理戦争を当て込んでしまうのだ。人間をかなり殴ったことのある人ならば、一人でせいぜい六人までが精一杯で、それが拳骨の限界であることをご存知だろう。しかし、一度も喧嘩をしたことのない人間には、自分の拳骨の限界も見えなければ、逆にそのパワーが相手をどこまで損傷するかの検討もつかない。それでは、相手の痛みも理解できないわけで、まずそこのところから、学生を鍛え直し、喧嘩のうまい、心優しい人格を育てようと考えたのが、藤原特別講師のご登場だったのだ。

 最近はテレビに出て、やたら剽軽ぶりを披露している吾人であるが、実際格闘技の場面になるとちょっと異様な怖さを漂わせる。さすがに私とのアマレスファイトの誘いにはのらなかったが、実験台の学生たちの間接を決めては、ばたばたと投げまくった。いずれの格闘技も、もとはと言えば、急所すなわちツボを知り、そこを効率よく制する技のことで、そこへの攻撃と防御がキーポイントである。藤原特別講師のおかげで、学生たちは人間のもっているパワーを知り、かつ弱さを熟知することとなった。

 中でも冒頭の「陰毛投げ」は、やられた奴の凄まじい悲鳴と見ているものの大笑いを誘うとっておきの藤原技であった。相手のバックをとった途端に、すかさず相手のまさに急所である「嚢」の上部、「毛」をギュッとつかみ、そこを支点に相手の体全体を投げ飛ばす。つかまれた方はあそこの毛をむしられる恐怖とともに激痛を感じ、一種の無気力状態に陥る。そして知らぬ間に体が宙を浮遊しているというわけだ。誰でも今すぐに相手を投げられそうなこの方法。是非皆様もお試しあれ。但し、ツボを的確につかむまでには訓練がいる。ちょっと手がずれてしまうだけで、ただの変態に化してしまう。

 断っておくが、もし喧嘩をするというのなら、絶対に自分より強いものとやるべし。そうでないと、ただの弱い者いじめになってしまう。何?相手が自分より強いかどうか分からないだと?そういう人は、さっさと家に帰って眠りなさい。格闘技は自らを高めるためにあるのだ。決して相手を滅ぼすためではない。このことだけははっきり言っておきたい。

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