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旭鷲山がモンゴルのアマレス選手権銀メダリストであったことは先週号でお伝えしたが、モンゴルのレスラーとの闘いで忘れることのできない試合がある。 一九八二年と言えば昔話になるが、インドはニューデリーで開かれたアジア大会でのバウトである。女性はきれいで、香辛料のきいた飯はうまいし、その上酒があれば最高。 しかしプロレスと違って、重量制限のあるアマレスラーにとって、大会中の酒は御法度。体重管理は重大事のひとつである。飲むのが好きなレスラーが試合に合わせて、ビールを控えるのは本当にきついことです。まあ選手村には酒は持ち込めない?ので、その分諦めもつくのだが、試合に臨む時にはいつもアルコール切れの状態である。 私の長き?にわたる格闘史のなかでも、決して忘れられないバウトの一つがこの大会で実現した。 相手の名はバトルフォー。モンゴル相撲の大横綱。あの裸体も露わな伝統衣装を身に付け?堂々と選手団の旗手を務めた男。当時アジア一と言われた実力者である。この試合が忘れられないのには二つの理由がある。ひとつは会場の異様さだ。ともかくレスリングの会場となったのは、広いサッカー場。つまりオープンエアのスタジアムである。こんな経験はめったにあるものではない。パンクラチオン丸だしの野外の舞台。広い緑のフィールドにレスリングマットが敷かれ、あちこちで競技が繰り広げられていた。一歩スタジアムに踏み込むと、いきなり古代ギリシアにタイムスリップしたような感覚に襲われた。 私たちの決戦が始まる頃には、大インド砂漠に沈む夕日が最後の光を赤々とレスリングマットに染めていた。他の試合も終わり、大観衆の目は我々だけに注がれている。まさに荒野の決闘という雰囲気なのだ。この時格闘技が屋外のものであることを悟った。 でもそれよりもなによりもこのバウトの思い出を決定的にしたのは、もう一つの理由。それは酒の臭いだったのだ。組んだ瞬間に、相手から恋いこがれていた酒の香りが!こいつ飲んでいる。最初はその臭いにむせび、ごろごろリング上を転げ回った。しかし酒は私を裏切らなかった。でもこれいい匂いだなあ。いつしか私は相手の香りに慣れ親しみ、ムンズと彼の身体に組み付いていった。そして最後は大逆転のフォール勝ち。 試合後、私はモンゴル選手団の部屋を訪ねた。計量も気にせず酒飲める大人物に表敬したのだ。あの臭いの元を確かめたかったというのもあったが。手に燦然と輝く正真正銘のモンゴルウォッカを持ってバトルフォーが出てきた。でも言葉は通じない。ひたすら杯を酌み交わすしかないのだった。後で分かったのだが、あの時臭ったモンゴルウォッカは、「天の神、地の神、水の神」と指に酒をつけてはじく儀式を闘いの前にしただけのこと。禁酒状態の私の思い込みだったらしい。以来会うたびに我々はただただひたすら酒を飲むしかない仲になってしまったのです。 私に勝利と友を与えてくれた「酒の神」。今夜も家外で酒の神に感謝しようっと。あっとその前に山の神に許可をもらわないと・・ |
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