NO 9: 馳よ!!君のパワーで日本を変えてくれ
週刊漫画サンデー7/8号

 このところ世の中暗い話題が多すぎる。大企業と暴力団の黒い輪。大蔵官僚の汚職。住専で得した奴のためになんで我らの血税を使うんだ。「ざけんなよ!」馳

 こうなれば、純粋で強烈な正義感と燃えたぎる情熱を持った「まるごし刑事」の丸腰さんや「999ドクター」の鷹羽さんに期待したくなるのだが、残念無念彼らは漫サン界から下界には降りてきてくれないのである。

 そうなれば、優しい心と強靱な肉体を持ったフィジカルエリートの政治家「馳浩」先生に世直しをお願いするしかない?!レスラー馳浩が政治のリングを選んだのもそんな庶民の期待に答えたかったからという。私も党派を超えて応援したい。なんせ我らは「これで五輪家族」ですから。

 なんだかんだ言われても、湾岸戦争のせいで、人質になった日本人のためにクウェートに乗り込んでいったのもあの国会議員猪木寛司氏だったではありませんか。

 ロス五輪に出場した当時は感じ取れなかったのだが、今思えばあの頃から馳には他のレスラーにない秘められた情熱のようなものがあった。ロス五輪試合前の控室。さっきから椅子にうずくまり微動だにしない馳の後ろ姿。もうそろそろアップを始めないといけない時間だ。かなり緊張しているようだ。こういう時は声をかけるのは控えた方がよい。後輩馳のために私は周りのチイムメイトを制した。

 それにしても長すぎる。思い切って私が遠くから一声。

 「おい馳!そろそろ試合だぞ!」

 ちょっとうなずいたようだが、動こうとしない。試合前のプレッシャーはかなりのものだ。あまり逆なでしないで様子を見よう。それにしても動かない。でも時々身体を小刻みに揺するので眠ってはいない。こちらまで緊張してくる。長く感じる時間。もう限界だ。私は後ろから馳を揺さぶった。きょとんとつぶらな瞳をこちらに向けた馳。

 「あっ。太田さん。いたんですか?」

 手には本を持っている。リラックスのために漫画読んでいて、つい夢中になっちゃたのか。よくあることだ。

 「これすげえ面白いすよ。」

 そういって手渡された本には、わけのわからない文字が。怪訝な顔をする私に馳はそれが古典「平家物語」であることを説明した。

 「太田章の鬨の声、諸行無常の響き有り。がんばってきまーす。」

 唖然とした私を後に馳は試合に向かった。

 負けても負けても負けても諦めないで馳はこの五輪出場を手にしたのだ。目をつむっていても勝てた馳が手にした五輪出場は私にとってもうれしいものだった。しかし彼の懐にはいつもこの世は移りゆくものという悟りがあった。米国武者修行中のリングネームはベトコン○○。会場にはベトナム戦争での怨恨を持つ米国人が詰めかけている。中にはナイフを持ち込むものが。馳が負ければいいが、勝った時には狙われるのだ。「おれベトコンじゃねえ。」と叫んでも彼らは聞かない。米国修行はリング外も含めて命がけの闘いだった。そんな修羅場をくぐり抜けた男。馳浩。馳よ!超肉体派のパワーで日本を「ドリームスタジアム」に変えてくれ!

 私もヒンズースクワット止めないからさ。

      祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響き有り
      沙羅双樹の花の色 盛者必衰の断りを示す
      奢れる者は久しからず ただ一夜の夢のごとし
      強き者は必ず滅す 風の前の塵のごとし

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