2013.02.13
カテゴリ：オリンピック
vol.283 レスリングがなくなる日 ～ドメスティックバイオレンス～
━━━━━━ Weekly Column Sport Philosophy ━━━━━━━
週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.283
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━Genki-na-Atelier━
＿＿(、。）┓
━━━━━━━━━━━
○○○○○●●●●●○○○○○●●●●●○○○○○●●●●●
────────────────────────── ☆☆☆
レスリングがなくなる日
～ドメスティックバイオレンス～
昨夜流れたニュースに耳を疑った。レスリングが、2020年五輪
の除外競技候補に「選ばれた」。2月12日に開催された国際オリン
ピック委員会（IOC)の理事会の投票の結果である。耳を疑ったの
は、国際レスリング連盟の幹部も同じ、世界中のレスリング関係
者も驚いた。
近代五輪は古代ギリシアで行われていたオリンピアードを復活
させたものである。4年に一度、各ポリスは停戦し、アテネに集ま
り、オリンポスの神のもと、素手で戦ったのである。この思想が
世界平和構築運動に繋がるとピエール・ド・クーベルタン男爵は
オリンピズムを唱えた。
レスリングこそ古代スポーツの代表格であり、その意味でレジ
ェンドである。それを除外するという決心に余り大きな意味を感
じていないIOC理事会に驚く。本来ならば、それなりの事由を会見
するほどのことだろうが、IOCは、マーク・アダムス広報部長が、
「人気、国際性、男女の選手の比率などを考慮して、理事会で協
議した結果、最終的に投票で決まった」としただけである。
日本では特にロンドン五輪での日本選手の活躍もあり、頻繁に
メディアに取り上げられたレスリングであるから、まさか「人気
がない」などとは思ってもいなかった人が多い。日本代表に限れ
ば、歴代で最も金メダルが多いのもレスリングであるはずだから、
そう思っても仕方がない。
アメリカのレスリング関係者もボストンジャーナルに論評を載
せ、「IOCはスポーツを殺す！これは冗談だ！」とレスリングが全
米でいかに人気スポーツかも強調している。
それでも国際標準は、レスリングを五輪スポーツから除外候補
としたのである。
IOCの決定システムがごくごく「個人的」であることはあまり知
られていない。理事会は最高の執行機関として、機能しているが、
そこに参集する理事はどうやって理事になれるのか？そのことは
ほとんど知られていないだろう。
簡単に言えば、プレジデンシーである。会長権限のなせる業。か
つてのサマランチ会長がその施策を見事に使いこなしてオリンピッ
ク運動を管理してきたのを想起するのは、それほど困難なことではない。
今回の決定は、まさに決定権のないロゲ会長のなしたことである。
誰も気がついていないだろうが…理事会メンバーにサマランチ会長JR
がいた。近代五種に関係している。レスリングと近代五種と天秤にか
けれれれば、レスリングが犠牲になるだろう。
IOCの世界は、かくして理念なき施策に傾斜し始めている。その世
界に参入できた者のエゴとポリティカルバランスが全てを決めていく。
五輪のモットーは何か？より高く、より早く、より強く！
「より強く」」の代表格であるレスングを除いて、オリンピズム
は成立するのだろうか？
今回の決定は、いかにIOCがオリンピズムを失っているのかを如実に
語っていると言わざるをえない。
米国レスリング関係者のコラムが語るように、IOCは自らの存在基盤
である「スポーツ」否、SPORTの理念を捨てようとしいているとしか思
えない。
親密なパートナーに暴力を振るうことをドメスティック・バイオレン
スと言う。まさに今回の決定はそれ以上でもそれ以下でもない。
明日香 羊
────────＜・・
△▼△▼△
編集好奇
▲▽▲▽▲
ドメスティックと言えば、まさに東京五輪招致活動は、ドメス
ティックと言わざるを得ない。
今、手元にあるシールを見れば「今、ニッポンにはこの夢の力
が必要だ」である。
ニッポンのために五輪を招致するというのだ。五輪のために東
京を差し出す（プレゼントする）のではない。
そういう都市を五輪主義は果たして選ぶだろうか？
親善大使の吉田選手の競技はレスリングである。
沈思黙考。
━━━━━━━
考？ご期待
━━━━━━━
次号はvol.２８４です。 ―――――――
┃ copyright(C)1998-2012,Genki na Atelier ┃
★本誌記事の無断転載転用等はできません。★