vol.291 IOCと国連 ~世界平和戦略のヒント~

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  週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.291
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IOCと国連
~世界平和戦略のヒント~


 IOCが設立された1894年について帝国主義の台頭する欧州にお
ける危機をスポーツと教育によって克服する試みとして多くの知者
はクーベルタンを評する。

 しかしもっとその思想に突っ込みを入れれば、彼が本気でスポー
ツで平和な世界を実現できると考えていたことが分かる。
 そのひとつが、IOCの構造である。このことは実は一般には良
く理解されていない点かもしれない。

 IOCは国連のスポーツ版と思っている人が多いのではないか?
しかし構造から考えれば、根本的な違いが浮かび上がる。IOC委
員はIOC自身が指名し、オリンピズムを伝える大使として、オリ
ンピック運動の実践されんとする国あるいは地域に派遣される「大
使」なのである。
 
 一方、国連は各国を代表してその機関に国連大使を派遣する。
 この相違はナショナリズムの克服には致命的な欠陥ではないだろ
うか?

 国連はそれぞれの国の利益を代表する者が集まり、その利害調整
を図ることがその構造上、論理的な帰結である。そこから生み出さ
れるのは妥協もしくは調停、あるいは非実現しかありえない。

 これに対して、IOCではIOCの理想を実現するための特使を
各国に派遣する形をとっているのであり、あくまでもIOCの理念、
すなわちオリンピズム、すなわち「スポーツによる世界平和構築」
を成し遂げるために、各国のナショナリズムと外交することになる。

 外交というのは外国交際の略で、internationalを福沢諭吉が翻
訳したものである。IOCはスポーツ王国として世界中に大使を派
遣し、外国交際を繰り広げ、世界平和構築への布石を打てる構図で
ある。

 ここにオリンピズムがナショナリズムを超越する仕組みが作られ
ているのであり、それこそがクーベルタンの心根であったと思う。

 そうであれば、まさにIOC委員はスポーツ平和大使として派遣
された各国でIOCをオリンピズムを代表して、その理念実現の努
力を常にしなければならないこととなる。

 この理想に沿った行動規範を全うしているIOC委員がどれだけ
いるかは不問として、この構造を維持する限り、「スポーツで平和」
の理念は貫くことができる。

 また一方で各国にその国の五輪運動を統括する組織として、国内
オリンピック委員会を創設し、その国の理念実践機能を維持してい
る。しかし当然その国内オリンピック委員会にはその「国」を統括
するという意味でナショナリズムを代弁し吸収する機能を持たせて
いる。これによってただナショナリズムの超克が青き夢で終わらな
い仕組みも作っている。

 各国のオリンピック委員会を連合したのが国内オリンピック連合
であるANOCで、こちらはそれぞれのNOCのエゴを調整する機
関として国連のスポーツ版といっても良いかもしれない。

 そしてさらにそれぞれの競技を統括する組織として、国際競技連
盟すなわちIFを作り、平和構築のツールとなるスポーツ振興を担
わせている。IOC,ANOC,IFこの三角の間にスポーツ平和
構築の場ができる仕組みである。

 以上のように、極論に思われるだろうが、本当に世界平和を願う
とするのならば、構造的に国連よりもIOCがその責を果たせる機
関でありえるのではないだろうか。

 IOCはバランスを重んじる。そのバランスとはまさにナショナ
リズムのバランスであり、国と国の狭間internationalのバランス
である。

 それがスポーツ平和構築の夢を実現できる秘密の鍵であることは
既に読者の洞察できるところであろう。

(敬称略)
 
2013年8月12日
                         明日香 羊 ────────<・・

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編集好奇
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 IOCはバランスを重んじます。そのバランスとはまさにナショ
ナリズムのバランスであり、国と国の狭間internationalのバランス
です。
 それがスポーツ平和構築の夢を実現できる秘密の鍵であることは
既に読者の洞察できるところと思います。
    
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  考?ご期待
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 次号はvol.292です。 
 私の招致戦略を描きたいと思います。
 「皇帝サマランチから長野五輪をもぎとった男」の生原稿、長野
五輪招致渉外録の公開を決心しました。
 招致のために一冊献上、公開は2013年8月13日までとしました。
 ありがとうございます。
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