vol.299 東京五輪組織委員会の行く末 ~五輪憲章を哲学する その2~

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 東京五輪組織委員会の行く末
 ~五輪憲章を哲学する その2~
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 2013年9月7日に2020年五輪開催地が決まって2ヶ月が経った。招致

成功の宴の後、組織委員会の設立に向けて、関係者が早速動き出し
たが、未だに会長の顔が見えない。会長という役職自身がないとい
う事態になっている。

 政府関係筋の情報として、東京五輪開催の発案者と言われている
森元首相が一時会長になると伝えられたが、ご本人が否定し、一方
で猪瀬都知事が組織委員会のことは「JOCと都が決めること」とオリ
ンピックチャーターの基準を主張し、国と都の綱引きが続いている
と見えた。

 オリンピックチャーター(五輪憲章)では、組織委員会について、
第35条「組織委員会」の項目で、「オリンピック競技大会の組織は、
IOCから、開催都市のある国のNOC および開催都市自身に委任される
ものである。当該NOC はこの目的のために組織委員会(OCOG)の設
立に責任を持つ。組織委員会は、設置された時からIOC 理事会から
直接に指示を受ける」(JOC訳)としている。

 スポーツ思考vol.296やvol.297でも思考したが、五輪組織委員会
の設立に責任を有するのは日本オリンピック委員会だということが
明らかである。となれば、今回の組織委員会造りの構想について、
JOCからの意思表明が聞かれてしかるべきであるのに、国と都の話
しか聞こえてこない。

 オリンピックの価値に気付いた日本政府や東京都が躍起になって
その主導権を執ろうとしているようにも見える。本来ならば、JOC
の決心に対して都が協力して、国が応援していく様子が見たいとこ
ろである。

 今は組織委員会のトップをどう取るかの観点しかないので、その
先が見えていない気がする。五輪憲章は、「組織委員会は、設置さ
れた時からIOC理事会の直接の指示を受ける」と明記している。つ
まり、組織委員会が出来た途端に、組織委員会はIOC理事会の傘下
に入るということである。見落とされている点ではないか?

 そのゴールから考えれば、IOC理事会に対して、五輪開催都市と
してオリンピズムに基づいて対応できる組織作りが必要となる。
そこから考えた場合、果たして政財界の人間となるのだろうか?

 オリンピックマーケティングは独自の五輪スポンサーシップを展
開する。そのリーダーが必ずしも日本の財界出身者である必要はな
いだろう。むしろオリンピズムから東京オリンピック全体をリード
してくれる人材が必要なはずだ。

 猪瀬都知事は、竹田JOC会長と協力して組織委員会構想を練って
いるとこのことで、「ロンドン五輪を参考にして、会長を置かず、
理事長を置く」という説明をしているが、ロンドン五輪組織委員会
のトップは英語でChairman。委員長や会長の訳の方がピッタリくる
が、どのような言葉で表現しようと、ロンドン五輪を参考にするの
ならば、すべての責任を持つトップを決めることが肝要である。

 昨日の産経新聞一面トップに「五輪顧問会議議長、森元首相で調
整」との記事が出たが、これによると五輪担当相、JOC会長、都知事、
そして理事長で顧問会議を構成し、その長が森元首相とのことで調
整が進んでいるとのことである。顧問会議長、理事長など長の付く
ポストが増える一方の気がする。

 招致までは外交として対世界にたいして開かれていた心が、組織
づくりとなってまたまた日本にしか通用しない内向きなものになっ
ている。この組織委員会は、2020年という未来に向かって、夢と希
望を都民、国民に与えるものでなければならないという最も大切な
任務を担うのである。その限りで、IOCとも協調してやっていけるは
ずである。

 ロンドン五輪に倣うのならば、むしろ、会長職にオリンピアンで
スポーツへの愛に満ち、豊かな国際感覚を持ち、国家事業に精通し
ているセバスチャン・コーのような人物を選ぶべきなのではないか?

 招致の最終プレゼンテーションで「オリンピック運動への帰依」
を表明した安倍首相ならば、分かってもらえると思うのだが。

2013年11月13日  

                        明日香 羊         
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編集好奇
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 長野五輪の時もそうでしたが、招致成功までは、国際性を全面に
打ち出す活動をしていましたが、大会開催が決まった途端に国内的
視野にたった人事に変換されました。
 招致の時に確約したアジアの冬季スポーツ強化基金は、もともと
アジアで冬季スポーツが普及していないNOCの選手強化への支援に
利用されるはずでしたが、いつしか日本選手強化に利用されてしま
いました。
 オリンピックは未来への夢と希望をもたらすものである。その一
点だけを考えて、そのための組織委員会造りに知恵を絞ってほしい。
そう願うこの頃です。
 皆様のスポーツ思考に感謝しつつ。

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  考?ご期待
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 次号はvol.300です。 
 (1998年からの300号はいつか?)

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