死ねばわかるさ~ソチ五輪のメッセージ~

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  週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.310
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  Sport Philosophy 

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 死ねばわかるさ
 ~ソチ五輪のメッセージ~
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 ソチ五輪は厳戒体制の中行われた。プーチン大統領はロシアの威
信を掛けてテロを防いだ。動員した警察、軍関係者は7万人といわ
れている。黒海にも多くの潜水隊を沈めていたというほどである。

 開会式のあった2月23日は、70年前、スターリンがソチに隣
接する北カフカス地域のチェチェン人やイングーシ人を中央アジア
に強制移住させた日であったから、その警備は熾烈だった。

 多くのメディアがこの厳戒体制を批判的に報道している。しかし
こういう事態は、五輪にはつきものである。開催されるたびに安全
と友好のジレンマが起こる。ソウル五輪の時、英語の通じない韓国
軍のセキュリティと小ざかしい揉め事が選手団と起こったことが思
い出される。

 私自身、大会が終わって出国するその日、空港で大立ち回りを演
じた苦い経験がある。もっとも1988年のことだが。日本選手団本部
では前日の閉会式を終えて翌日の帰還。経費節約のため長居をしな
い伝統である。本部の荷物の中でも最も大変なのが医療機器。中で
もホットパックの器具は3メートル四方くらいの巨大物体。前日、
医療チームは梱包するだけでもかなりの時間をかけていたのを私は
見ていた。

 オリンピックは特別な時空で、その時空に入れる者はIOCに代
わり組織委員会が認定する。その証拠にアクレディテーションカー
ドを発行する。ADカード、資格認定証である。これを保持してい
るものがオリンピックファミリーとなり、五輪領域への参入や特別
な恩恵を受けることができる。

 入国もADカード発行前のIDカードによって特別待遇となる。
選手団の荷物にはオリンピックステッカーが貼られて、チェック
なしに通関する。出国も同様である。オリンピックステッカーの貼
られた選手団の荷物は組織委員会によってアイデンティファイされ
たものとなる。

 ところが、その日、通関の担当の韓国女性は巨大荷物をチェック
し、この梱包を解けと命じた。困った医療チームが私に交渉を求め
た。「これはオリンピックファミリーの荷物であり、日本オリンピ
ック委員会がエンドースしたものである。組織委員会が配布したオ
リンピックステッカーを見てください」

 しかし税関女性はがんとして受け入れない。
「開けないならば、通さない」
「とても精密な機械なのだから厳重な梱包をしている。開けたもの
を責任をもって同じように梱包してくれるのなら、開ける」
「それはしない」
 (するわけはないと知りつつ迫る)
「日本オリンピック委員会が保証した荷物を信用しないということ
はオリンピックファミリーへの侮辱。ひいてはオリンピックへの
侮辱だ」

 私はオリンピックの交渉事には長年の経験があったし、自信もあ
た。五輪家族の大義名分を振りかざして負けたことはなかった。し
かし、この時はどうにも動かなかった。

 大声でやり合う私たちを警備、軍隊、そして選手団関係者が取り
囲んだ。大使館から派遣されていたサブアタッシェたちも心配して
かけつけた。私は警備室に連行されようとしていた。「〇〇が危な
い」(〇〇の部分は私の名前)日本大使館の友人たちが駆けつけ、
韓国語で穏やかに仲裁を始めた。

 私は難を逃れた。荷物は無事通関した。

 この時の交渉術は大義名分から恫喝だったが、韓国女性の強さは
侮れない。逆に絶対に譲歩しない。

 この時の奥の手はいずれ紐解きますが、いずれにしろ、オリンピ
ックの時空が特別な空間であり、それを守るために主催者側が万全
を期すは当然。一方でオリンピックファミリーであるが故のプライ
ドは最後まで維持することがこちら側の必然。

 両者とも五輪主義をある意味両方から支えている構図である。こ
のアンビバレンスは五輪につきもので、それ故にその五輪があたか
も管理された五輪だと言われるが、必ずしもそれが正解でないこと
は以上の文脈でお分かりになるでしょう。

 ソチ五輪が「プーチンの五輪」と言われるのは、そうした管理体
制を皮肉るものでもあろうが、プーチンがオリンピックの平和理念
を守るためにとった行動である限りにおいて、完璧なる警備は許さ
れるはずだ。

 しかしそのプーチンが平和の祭典が終了した途端に、武力を用い
た戦略に走った。ウクライナオリンピック委員会の会長を務めるブ
ブカ氏は2月19日、ツイッターに「対話は力であり、暴力は弱さ
だ」「ウクライナの選手はソチで平和に、そして敬意をもって戦っ
ている。暴力の居場所は世界にない」「すべての当事者に呼びかけ
る。五輪の伝統を思い出してほしい。武器を置くのだ」と書き込ん
だ。

 プーチンは五輪休戦は実行した。果たしてパラリンピックをどう
思っているのだろうか?パラリンピックは果たしてオリンピズムを
遂行できるだろうか?武器を持たない闘いをする意思を示すことが
できるだろうか?

 ウクライナ問題はオリンピズムにきつい一発を突きつけている。
 プーチンが五輪から何を学んだのか?オリンピズムを至高の哲学
と認めますか?それとも

                         (敬称略)

2014年3月5日  

                        明日香 羊         
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編集好奇
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 昨日の本稿と本日の報道。プーチンをオリンピズムが凌駕した
と言えないでしょうか?

 皆様のスポーツ思考を期しつつ

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  考?ご期待
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 次号はvol.311です。 
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