二大会同時決定は歴史的決断か?~招致活動の競技性~

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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.371
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Sport Philosophy
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二大会同時決定は歴史的決断か?
~招致活動の競技性~

イタリアサッカー狂騒曲というイタリア映画を見た。
最下部リーグの弱小チームがその村にふらっと帰ってきたサッカー
選手の活躍でリーグの一位になるまでの物語。村民のサッカーへの
思い入れぶりと選手の絡みが面白いが、それと並行に出世頭のリー
グ審判が成功のための工作と没落にまみれるストーリーが展開して、
落ちぶれたその審判が、最下部リーグの一位が決まる最終戦の笛を
吹くことになり、最後のコーナーキックを図らずも、その審判が決
めてしまい、村の英雄になってしまう。

人間の欲望と滑稽さを描き、抱腹絶倒、波乱万丈の映画だが、イタリ
アでは、スポーツが単なるゲームではないことが心身に染みついてい
て、故に「スポーツは文化だ」などと敢えて言わなければならない
日本とは大きな違いがある。

国際スポーツ界が一筋縄ではいかないこと、だからこそ面白いという
ことをよく見せつけてくれた。

と同時に純粋にスポーツでの勝利を求める素朴な選手たちとは違い、
チームを率いたり、連盟を管理する役員たちは、スポーツの結果さえ
もコントロールしようとするスポーツ界の実情を描き出していた。

***
IOCが7月11日ローザンヌで開催された第130次総会「歴史的な決断」
をした。2024年五輪開催地に立候補しているパリとロサンゼルスを第
131次総会(9月、ペルーはリマで開催)で、IOCと二都市の三者同
意が成立すれば、2024年と2028年の開催地を決定することとした。同
意が為されなければ、現行五輪憲章どおりの投票となる。

オリンピアード2大会分を同時に決めてしまおうと言うことである。

IOC会長のバッハは「歴史的な決断」と勢いに乗るが、そこには一
筋縄ではいかない様々な思惑があると見なければならない。

バッハ会長の任期中に行った「歴史的な」決心がのちのち取返しのつ
かない決断となる可能性もある。

この決心にイタリアサッカー狂騒曲が描くスポーツをコントロールす
る側の論理が透けて見える。

背景には立候補した都市が市民の反対により、立候補取り下げを余儀
なくされている現実がある。2024年に手を挙げていたローマやブダペ
ストが次々に退いた。

IOCには実感としての「危機感」があることは事実だろう。そのた
めに提言したIOC会長バッハの「アジェンダ2020」40項目の改
革案がある。

二開催を同時に決めることによって、招致活動にかかる経費は削減さ
れるだろうし、招致活動の経費削減はアジェンダ2020にも強調さ
れていることではある。

お金がかかりすぎる五輪招致や五輪への批判からの提言でもある。

五輪憲章の規定通りに2024年の開催地が決まり、そしてまた2028年の
立候補都市を決めるプロセスに入った時、それは東京五輪の一年後に
なるのであり、東京五輪の成功度が立候補のモチベーションに大きく
影響する。

せっかく有力な二都市がいるのだから、そのリスクを回避することが、
バッハ会長政権にとっては重要であるのかもしれない。

その意味では理解しやすい決断であっただろう。しかし、オリンピズ
ムから思考した場合、単純に「WIN,WIN,WIN」とはいかな
い。

招致活動の面白さはまさに「スポーツ的」なところにある。もちろん
政治的な駆け引きや交渉事はついてまわるが、大会開催7年前に開催
都市を決定するために立候補都市は必死に戦うのであり、その闘いの
中でオリンピックとは何か?オリンピック運動とは何か?スポーツの
パワーとは何か?を学ぶのである。

そしてその結果は競技の結果のように決定的だ。スポーツでは3名が同
時に勝利者になるという論理は存在しない。WIN、WINすらもない。

二大会開催を同時に決めるというのは、招致活動のスポーツ性をなくし
てしまうことになる。ただのポリティカルな交渉になる。あるいは商談
になる。

一方、オリンピック運動の観点からすると、招致活動自身にオリンピズ
ムを広めるというオリンピック運動自身がある。

招致活動の中で、市民にオリンピックの本当の姿を訴え、だからこそ五
輪を我が町に呼びたいんだと思わせる活動が招致活動である。

それがない限り、2028年まで五輪は開催されると計画できても、その先
にあるオリンピックの姿は見えない。

2020年東京五輪も昨年の会場問題の焦点もまさにお金のかかる問題で、
それだけお金がかかっても五輪は開催する価値があるのだ!というとこ
ろをIOCもJOCもそしてその指導の下、東京都も啓蒙しなければな
らない。それが運動ということなのだ。

それがないから五輪会場変更問題が起きた。ではお金よりも大事なもの
とは?それは一体何か?

スポーツは未来を変える力がある!という意味には経済波及効果も入っ
ている。そしてそこに現実的力点を置く本音を持った人々がいることだ
ろう。そして実際にこれが大きいといことは2013年9月東京五輪開催が
決まった時点で出された日本経済新聞社中心の調査研究にもある。東京
が大改造されていく希望ある展望が描かれている。

斬新な新国立競技場も、コンパクトな会場も今はもうどこかへ霧散して
はいるが、とはいえ、感覚的であるが、明らかに東京に来訪する外国人
の数は増大しているし、その五輪開催効果は少なくない。

しかし、それ以上にオリンピズムの根幹である世界平和構築の眼差しを
示すことが重要であろう。

スポーツは国の境、宗教の境、政治の境、男女の境、あらゆる境を超え
て、人と人とを結びつけるパワーがある。そのために頂点の祭典である
五輪を開催し、その思想を継承する意思を伝える。その一員になること
が五輪開催都市になることだという具体的な意識を啓発しなければなら
ない。

そのための予算を真剣に獲得することがどれだけ重要か?
それは世界平和構築の資金になるのである。

この部分は五輪主体が真摯に訴えなければならないところである。そし
てこの信仰がない限り、五輪運動は停止する。

招致活動は五輪のために都市がその国のNOCがそして政府が汗を振り
絞って闘う、そしてその結果をフェアに受け止める。

勝利者と敗北者の天地の差は究極的なものである。しかしその禊を得る
ことで、それぞれの都市もNOCも政府も成長するのであり、そこにオ
リンピズムの重要な仕組みがあるのだ。

来たるべき第131次IOC総会はオリンピズムにとって「歴史的」に重
要である。

(敬称略)

2017年7月14日

明日香 羊
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編集好奇
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私自身のことを言えば、長野五輪招致に関わりの中で、
オリンピズムの真髄に触れることができた。その後に
アジアスポーツ分裂回避やサラエボ義捐金活動があり、
そしてサラエボスポーツフェストへの道が見えた。

皆様のスポーツ思考を期しつつ

春日良一

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考?ご期待
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次号はvol.372です。
(1998年からの400号を目指して あと29思考?!)

スポーツ思考
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