2017.08.18
カテゴリ：政治
専守防衛のスポーツ～自衛のための先制に対して～
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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.372
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専守防衛のスポーツ
～自衛のための先制に対して～
毎日新聞の8月17日一面に特集された元モサド長官のインタビュー
記事は秀逸であった。1997年のハマス幹部暗殺未遂事件の真相が語
られている。イスラム原理主義組織ハマスの政治部門代表のハレド・
メシャル暗殺計画の失敗と反省が語られている。
モサドはイスラエル存続のためにイスラエル撲滅組織の計画をその
芽の小さい内に潰し、安全を確保する。そのために緻密な情報戦略
により、正確な極秘情報を掴まなければならない。高度なインテリ
ジェンスが求められる。
アラブ勢力の中でイスラエルの友好国として存続しているヨルダン
にいたメシャルをヨルダン内で殺害することは二国間の外交を根底
から覆すものだ。この殺害は極秘裏に行われなければならなかった。
証拠が残らない特殊薬物によるものだったが、失敗。ヨルダンはイ
スラエに解毒剤と化学式の提供を要求し、メシャルは生き返る。
歴史はこれを「モサド史上最悪の失態」としている。
山中慎介は8月15日世界ボクシング評議会（WBC）バンタム級タイト
ルマッチで、13度目の防衛を逃した。トレーナーの大和心は、ロー
プを背に連打を浴びる山中選手を見るに見かねて、四回にタオルを
投入した。この投入を所属ジム会長の本田明彦は「早すぎた」と非
難した。
しかし、2009年3月に日本ミニマム級王座決定戦で教え子の選手を亡
くしている大和トレーナーにとっては「今、投入しなければ」のタ
イミングであったようだ。
果たしてどちらが正しい判断であったろうか？
錦織圭が右手首の腱断裂により今期残り全試合を欠場することにな
った。本年3月のマイアミオープンで負傷し、4月は休養をとったが、
5月のマドリッドオープンでも痛みが出て準々決勝を棄権した。今期
の残り試合を欠場することで、現在の世界ランキング9位の位置も振
り出しに戻る。
もし、3月のマイアミオープンでの負傷に対して万全な策をとってい
たら、状況は変わっていたのではないか？
モサドの自衛のための先制は冒頭の失敗談以外は奏功しているよう
にも見える。タオル投入は山中の人生を救ったかもしれない。錦織
の怪我への対処は遅きに失した感がある。
「モサド史上最悪の失態」はインテリジェンスの不完全さにあった。
想定外の事態が起きたら暗殺作戦中止だったところ、メシャルが子
連れだったので、中止の合図を出したが、それが柱の陰で見えず、
実行してしまった。
同様にタオル投入を実行するには山中の戦術と相手選手の戦術をつ
ぶさに分析したインテリジェンスが必要になる。錦織の怪我も最初の
時点で緻密な情報を得ていれば、違った結果となっていただろう。
「自衛のための先制」を容認するモサドの行き方とスポーツにおけ
る「選手を守る」ことを考察すると、あながち日本の「専守防衛」も
机上の空論には見えなくなる。戦争を前提とした外交は敵を亡き者に
するが、スポーツ外交は敵を肯定するからだ。
（敬称略）
2017年8月18日
明日香 羊
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編集好奇
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他国へ攻撃をしかけることなく、攻撃を受けたときにのみ武力を行使
して、自国を防衛することを「専守防衛」と言う。
皆様のスポーツ思考を期しつつ
春日良一
夏の甲子園についての批評コラムが産経デジタル「iRONNA」に掲載
されました。
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考？ご期待
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次号はvol.３７３です。
（1998年からの400号を目指して あと28思考？！）
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