札幌オリンピック2030年招致を笑う 〜井の中の蛙、いまだに大海を知らず〜

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札幌オリンピック2030年招致を笑う
〜井の中の蛙、いまだに大海を知らず〜

札幌市は2030年冬季五輪・パラリンピックの招致を目指し、11月29日、新たな大会概要案を公表した。その公表の目玉は。開催経費の削減で、19年の試算と比べ100億~900億円圧縮したことであった。総額2800億~3千億円との予算だ。笑う以外にない。五輪招致に最も重要な「何のために札幌に五輪を招くのか?」の哲学が一切論じられていない。たったついこの間終了した東京五輪2020の七転八倒ぶりを忘れたかのようだ。

東京五輪は開催されたことに意義がある。がしかし、そのことと東京五輪2020が残した課題分析は別の話だ。東京五輪2020の反省なきまま進む日本のスポーツ界、そして日本の社会は大いに問題である。

実際、東京五輪開催議論で示された日本人の思いは「五輪は絶対的存在ではない」ということである。コロナ禍で敢えて開くほどの価値があると信じていたものはほんの一握りだった。オリンピックを開催することによって得られる人類の希望と団結などという綺麗事よりも、現実、目の前にある生活を何とか守り続けることが重要だと多くの日本人が思っていいたのである。

喉元すぎれば熱さを忘れ、コロナパンデミックのような緊急事態もなく、五輪開催を反対する人々もなく、みんながスポーツ大好きという環境の下で、札幌市のリニューアルのためにオリンピックを招く。それが東京五輪開催前までの日本の常識だった。それは森喜朗元首相の言葉でも明らかだ。「オリンピックが開かれるほど平和な世界にしなければならない」それは、戦争のない平和な世界でしかオリンピックが開催できないということの裏返しでもある。

しかし、コロナのパンデミックはさらなる高みを突きつけた。例え命が危険にさらされたとしても五輪は開催する価値があるのか?と。もし価値があるのなら、コロナのパンデミックが起きたとしても全力で対策を練り、戦争の危機が迫っても世界平和構築のために五輪を開催するという強い意志があるかどうかが、問われる時代に突入しているという現実がある。札幌五輪招致はそのことをすっかり忘却している。

これでは、東京五輪開催議論で日々何本かのテレビ番組に出て「開催意義」を訴えていた私はただのヒール役に過ぎなかったかのようだ。

2030年の五輪開催都市になるには、最低でもIOCが掲げる「クライメート(気候)・ポジティブ」な大会、すなわち地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減量が排出量を上回る大会にすることを保証しなければならない。そのためには、札幌市のみならず北海道、そして日本国政府の積極的関与が必然である。その具体的な取り組みを示す必要がある。

札幌五輪開催によって地球環境問題に対する日本社会が良き方向に向かう仕組みが実現できたとすれば、五輪の貢献が実証できる。実際、東京五輪開催のために医療体制を完備する対策が本気で取られていれば、五輪が日本の医療体制を整えるために役に立ったはずである。

五輪を実現することが世界をより平和でより良い社会にするという信念がなければ五輪開催はできない。東京五輪開催から学ぶべきことは、そのことであったはずだ。その上で、市民が五輪招致に決意を固めることができて、初めて本気で招致が始まる。それがない限り、東京五輪2020の二番煎じで終わるだろう。

その意味で、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の橋本聖子が、11月27日札幌市内で記者団に(札幌五輪が)「財政的に迷惑の掛からない状況の中で、これからの北海道や札幌市にとってプラスになるようなことがしっかり提案できれば、世論調査の数字も高くなる」との語ったのは大間違いである。世論に媚を売って五輪を招くような時代はもはや終わっているのだ。そのことを認識すべき日本スポーツ界のリーダーの不在が嘆かれる。

実際、東京五輪開催、是か非かの激論の最中、一人でも開催を主張する声をあげた日本オリンピック委員会(JOC)の理事がいたか?「安全安心の大会を」と菅元首相と同じレベルの発言が精一杯だった。本気で五輪理念を信じている者が果たしているのだろうか?

その反省がないまま札幌五輪を招致するとは?札幌に五輪が来て、国際スポーツ界にプラスがあるのか?IOCの国際戦略に資するものがあるのか?「北海道の素晴らしさ、日本の素晴らしさを今度は冬季(五輪)の舞台で発信することも重要」(橋本)では、招致に勝つことはできない。素晴らしさはまさに多様なのであり、それぞれの都市が素晴らしいのである。

ソルトレーク、バンクーバー、ピレネー&バルセロナ、ウクライナとライバルが名乗りを上げている。それぞれが素晴らしい。実際、2030年開催都市の招致は、これまでの招致合戦とは違い、それぞれが話し合いの中で最もふさわしい時期に最もふさわしい都市を決めていくやり方。ソルトレークは、2028年ロサンゼルス五輪の次のオリンピックとなることを売りにできる。夏のオリンピックのシステムをそのまま持っていけるからだ。小手先の経費削減では五輪はやってこない。そのことを肝に命ずべきだ。

それに、「ぼったくり男爵」が流行語になる国に、もはや五輪がやってくるとは思えない。五輪を裁いていると思っている者は、五輪に裁かれている。

(敬称略)

2021年12月2日

明日香 羊

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編集好奇
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1940年の東京オリンピックは戦争で中止となった。と同時に実は、
同年の札幌オリンピックも中止となっていた。札幌冬季1940を
見込んで、ホテルを建てた男がいる。しかも秋田に。次号はこのこと
からスポーツ思考を展開してみようと思っています。

春日良一

本年初頭に執筆した記事が好評というので、ご覧ください。↓
【Daiamond Online】
東京2020はなぜ中止にならないか?五輪生存をかけたIOCの「信念」
https://diamond.jp/articles/-/257564

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575

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考?ご期待
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次号はvol.445です。

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「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
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「純粋五輪批判」
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哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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