ABCのIOC批判から学ぶこと 〜オリンピズムは三項原理を尊ぶ〜

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ABCのIOC批判から学ぶこと
〜オリンピズムは三項原理を尊ぶ〜

12月27日、米国のテレビ局ABCが「北京五輪の外交ボイコット」を特集し、独裁政権である中国に五輪開催権を与えたIOCを非難した。

ABCと言えば、かつては五輪放映権を争うNBCの好敵手であった。しかし、500億円(当時のレート換算)の黒字を出した1984年のロサンゼルス五輪を最後に放映権争いはNBCの独占となっている。ABCにとってNBCと運命を共にするIOCは叩くべき対象でしかない。底流にはABC vs NBCの対立図式が見える。

一方、米国が先導した北京冬季五輪への外交的ボイコットは、選手団参加と外交使節団参加を遠心分離して、選手の参加には異議を挟まず、外交的代表は参加しないという形となった。米国に追随したのは英国、カナダ、豪州と言った国々。そしてボイコットをしないと率先して表明したのは、フランスそしてイタリア。アングロサクソンvsラテンの構図が浮かび上がる。

背景には中国が新疆ウイグル自治区でジェノサイド(民族大量殺害)を行っていると米国が認識していることがあるが、外交的ボイコットは、人権擁護の立場から五輪が開催される中国では外交をしないという米国の決意表明に過ぎない。ところが西側諸国の足並みが揃わず、逆に中国を利する状況になっているのだから、「世界の人々は、独裁政権に五輪開催権を与えたIOCを問いただすべきだ」とABCは厳しく追及している。

ブラッド・マーシャンド2021-12-30 16

しかし、IOCが選んだのは北京市であり、中国ではない。それは詭弁だという声も聞こえてきそうだが、五輪が都市開催であるという哲学はスポーツが世界平和構築のツールになるための仕掛けの一つだ。なぜか?

確かに中国の現在は権威主義国家である。しかし北京市については、もしその都市がオリンピック精神を重んじて五輪開催に手を上げたとしたら、そのことを責めるわけにはいかない。中国政府にはその都市の五輪精神を保証する義務がある。そのために超法規的な施行を行わなければならない。故に、政治的に対立している諸国の指導者が中国に北京五輪を祝しにやってくることを拒むことができない。招くのはIOCであり北京市である。

IOCが「オリンピックとスポーツは政治的に中立であるべし」と宣言するのは、社会構造上は、開催都市の上位にある国家には一線を画し、しかし、開催地と開催期間の限定的時空において、半永久的平和を実現しようとするための方法論なのである。世界平和を妨げるものは政治的対立であり、それを超越するためにはスポーツというツール、都市という概念を絡ませて、工作していかなければならない。それがこれまでの歴史から学ぶべきことだろう。

この事情をうまく説明できないかと思っていたところに、天文学者、池内了の三項原理を知る機会があった。ホームレスの人の仕事を作り自立を応援するBIG ISSUEという雑誌に連載されている彼のコラムを見つけた。娘が購入しているものだ。

前述したABCとNBCの対立。アングロサクソンとラテンの対立。あるいは権威主義と民主主義の対立。二項原理の行く末には勝負をつける発想しかない。池内によれば一次元的論理である。

この論理の帰結は損失を受けるだけの人間とベネフィットを受けるだけの人間を生み出すだけになる。三項原理はそこにもう一つの異次元を加えることで新たな可能性を生み出す。グーとチョキにパーが出てきて、強弱をそれぞれが内在し、相対的となる。グーはチョキに勝つが、パーに負け、チョキはパーに勝つがグーに負ける。二次元的論理。

「韓国と北朝鮮と日本が三項原理で互いの長短を認め合い結び合えば、東アジアの素晴らしい関係が気づかれるだろうに、としみじみ思っています」と池内はコラムを締めている。

三項原理が成立するには、磁「場」が必要である。それが都市開催という仕掛けだと気づいた。北京五輪が都市開催であるというオリンピズムの原点がまさに異次元の場となり、北京五輪の外交的ボイコットの賛否を超えて、中国、米国の対立を調和する。そこに日本が果たせる役割は大きかったはずだと、私もしみじみ思うところである。

(敬称略)

2021年12月30日

明日香 羊

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編集好奇
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あと一日で大晦日ですね。
今年は怒涛の一年でした。
東京五輪をめぐる様々な議論。
8月まではテレビ出演の嵐。
以降は突然の母親介護の日々。そして、今、年末に
東京五輪を総括しています。
昨日、今日とSmartFlashで小生のコメントが掲載されました。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/168297
https://smart-flash.jp/sociopolitics/168304/1
明日は、早朝からニッポン放送で東京五輪と北京五輪を語ります。
そして、自分的に一年を締めたいと思います。
年始にはダイヤモンドオンラインから小生の一筆がアップされます。
今年もご愛読ありがとうございました。
良いお年を!

春日良一

本年初頭に執筆した記事が好評というので、ご覧ください。↓
【Daiamond Online】
東京2020はなぜ中止にならないか?五輪生存をかけたIOCの「信念」
https://diamond.jp/articles/-/257564

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575
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考?ご期待
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次号はvol.449です。

スポーツ思考
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日刊ゲンダイ連載!
「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3625/

NHK大河「いだてん」を思考すると題して始めたブログ
「純粋五輪批判」
https://genkina-atelier.com/gorin/

哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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