プーチンにはスポーツが語るべきだ 〜何のためのオリンピックか?〜

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プーチンにはスポーツが語るべきだ
〜何のためのオリンピックか?〜

ロシアがウクライナに侵攻してからひと月になろうとしてるが、そ
の間にパラリンピックが閉会した。閉会からまもなく7日となり、オ
リンピック休戦も終わる。

プーチンは元来のオリンピック休戦は守ったと言わんばかりに、ソチ
五輪でも北京五輪(冬季)でも閉会の翌日から行動を起こしてきた。
あくまでも予想だが、パラリンピック開会までに戦争終結を予定して
いたかもしれない。

現実に休戦を破ったロシアに果たして国際オリンピック委員会(IOC)
は何ができるのか?6日間連載した「IOCへの諫言」(ゲンダイ)
ではIOCへの疑問を投げかけたが、その結論はパラリンピックのあ
り方に求めざるをえなかった。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495

ロシアが軍事侵攻を始めて二日後にIOCが出した勧告は国際競技連
盟(IF)へのもので、「主催する競技会にはロシアとベラルーシか
らの選手を呼ぶな!呼ぶとしても国の代表の形をとるな!」であった。
2月24日だっと記憶する。

その後に開かれるパラリンピックがどういう判断を下すか?注視して
いた。さすがにパーソンズ国際パラリンピック委員会会長は、国の代
表としてでなければOKとした。しかし、他の参加国からのクレーム
で最終的にロシアとベラルーシの選手の参加を諦めた。

私は、IOCの勧告について疑問を呈した。これまで貫いてきた政治
的中立は選手を政治的差別から守るためであったはずである。ならば
今回もそうあるべきで、国家の犯した政治的判断によって、選手を裁
くのはどうか?と。答えはしかるべき人物から来た。「オリンピック
の精神である休戦は、武器を置いてスポーツで集まることだ。そのも
っとも大事な原則を踏みにじった国には何らかの制裁が必要だった」
(ゲンダイには書かなかったが、私と同じ疑問を彼らも抱きつつの苦
渋の決断だった)

しかし、どうだろう?戦火からやってきたウクライナの選手たちとロ
シアの選手が競い合って、その結果を讃えあうシーンがあったら?終
わったばかりの北京冬季オリンピックでは、まさにそういうシーンが
あった。フリースタイル男子エアリアルでウクライナのアブラメンコ
選手が銀メダルを取り、ロシアのブロフ選手が銅メダルとなった。

競技終了後、アブラメンコ選手をブロフ選手が後ろからハグして祝福
し、お互いを讃えあった。この姿がSNSで拡散され世界の人々に感動を
伝えた。

この時はしかし戦争の危機はあったが、武器を取ったロシアの侵攻は
抑えられていた。戦争がある状態でのこのシーンは果たして成立する
のか?国が武器を取ってしまった段階で、選手の背負うものが耐えら
れぬ重さになる。オリンピックはナショナリズムを超えるためにナシ
ョナリズムを肯定しているというこのパラドックスが戦時下では止揚
できない。

IOCの提言についてそれを忠実に実行しているIFとそうでないI
Fがある。日本人のIF会長、渡辺が司る体操連盟は、ドーハで3月
6日に開催されたワールドカップにロシアオリンピック委員会からの
選手参加を認めた。彼はそれに反対する加盟国(競技団体)の役員に
政治を超えてフェアに闘うように説得した。しかし、その大会で、銅
メダルに輝いたクリアク選手は胸元に「Z」を張り付けた形で表彰式
に臨んだ。ロシア軍のシンボルになっている文字だ。その表彰台の金
メダルの位置にはウクライナのコフトゥンがいた。

理想と現実の乖離をまざまざと見るような光景である。

スキー、スケート、サッカーなどのIFはIOCの勧告に従っている。
ロシアオリンピック委員会はIOCのこの提言をスポーツ仲裁裁判所
(CAS)に差別として提訴している。一方で、女子テニス協会WT
A会長は当該国からの参加選手をOKとしている。そしてノルウェー
のオリンピック・パラリンピック委員会理事の一人はスポーツは差別
をすべきでないと辞任した。

私の疑問に答えるようにバッハ会長が声明を発表したのは、最近のこ
とだ。長い文章であったが、ポイントは「選手を守るため」だ。体操
のワールドカップで起こったような流れがエスカレートして、スポー
ツが武器を持った戦場のような状況になる可能性もあるからだ。

オリンピズムは政治、宗教、人種などあらゆる垣根を超えてスポーツ
で人と人とを結ぶことで世界平和に貢献するという思想である。武器
を取った国に対してはその思想を主張する気構えが必要になってきて
いる。これまではスポーツと政治は別。スポーツのための政治的中立
を貫くIOCで良かったが、しかし、今、つきつけれれている現実は
本気で政治を克服するためのツールとしてオリンピックを使わなけれ
ばならないということだ。

実際、この戦争はプーチンが武器を取ったが、取らしたのはバイデン
とも言える。もしバイデンが本当に平和を望むなら、外交的ボイコッ
トをせずに北京冬季オリンピックに来るべきだった。そこで習近平と
もプーチンとも平和のために話し合うべきだった。

Putin & Yamashita

そのためにはバッハは「スポーツは政治とは別だ」と閉じこもるので
はなく、「オリンピックはすべてを超えた場だ。平和のための場だ。
是非そこで平和のための話し合いをしてください」というべきだった。

そして、今、武器を取ってしまったプーチンには直接会って、オリン
ピックの理念を訴えるべきだ。そのためにこれまでプーチンや習近平
と仲良くしてきたのではなかったのか?IFを通した制裁は選手を苦
しめるだけで終わる。プーチンをオリンピズムで説得すべきだ。

そういえば、柔道家であるプーチンを説き伏せるには最適の人物がい
る。日本オリンピック委員会(JOC)の会長、山下泰裕だ。講道館
はプーチンに嘉納治五郎の直筆の書を渡しているらしい。「精力善用
自他共栄」嘉納が生きていれば一本とっていただろう。「尊敬する嘉
納とともにありたい」とかつて語っていた山下に期待したいところだ。

柔の精神も五輪の精神も踏みにじったら切腹しかないだろう。

(敬称略)

2022年3月18日

明日香 羊

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編集好奇
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精神一到何事か成らざらん!

春日良一

【ダイヤモンドオンライン】
北京五輪の「オリンピック休戦」をむげにしたロシア、
IOCバッハ会長の葛藤
https://diamond.jp/articles/-/298005

【ゲンダイデジタル】
IOCへの諫言 五輪憲章から矛盾を糺す
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495

日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575

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考?ご期待
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次号はvol.455です。

スポーツ思考
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「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
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「純粋五輪批判」
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哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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