中国大運動会に日中友好を探る 〜スポーツ外交なき日本の政治〜

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中国大運動会に日中友好を探る
〜スポーツ外交なき日本の政治〜

中国大運動会を語るにあたり、私と中国スポーツとの関わりに触れておきたい。

私は1978年、財団法人日本体育協会(体協)に就職した。当時は就職が厳しい時代で応募は70名を超えていた。それまで体育会の人脈で職員を採用してきた体協が初めて行った職員公募の試験に合格したのだった。スポーツ歴に何の実績もない男がなぜか自信を持って臨み3名の採用の一人に入ることができた。後で知ったが私以外の一人は名門早稲田のボート部キャプテン、もう一人は慶應大学水泳部マネジャーだった。

大学の就職案内に張り出された紙に書かれた条件は「体育会経験者、英語に堪能」の二つだけだった。当時、参議院議長だった河野謙三が会長を務める財団法人は私にとって魅力的だった。サッカーと哲学しか人生の目標になかった男にとって非営利スポーツ団体がピンと来たのだった。

就職前の面接ではほぼ国際関係の業務に就くという感じだった。盛んに語学について聞かれたからだ。哲学生の私の第一外国語はドイツ語だったが、英語は中学以来、NHK語学で習熟していた。しかし・・・

配属されたのは総務部総務課であった。話が違うと思ったが、9時半から5時半までコツコツと事務を学び、以降は哲学研究に没頭する生活にしようと納得した。ところが・・・

8月のお盆休み明けだっただろうか?特命が下った。日中スポーツ交流十周年記念事業のアテンドであった。10月開催の国民体育大会(長野県)視察を中心に日本各地を巡る中国代表団の日本訪問に同行する仕事である。急ぎ1ヶ月中国語を独学した。

代表団は中国各地から選ばれた体育関係者10名。23歳の私にとっては大老ばかりであったが、拙いながらも中国語で対話を求め、通じなければ筆談を挑み、親密な関係を築けた二週間であった。

総務課に配属されて4年後、私は国際部に人事異動。以降、国際スポーツ機関や各国体協やオリンピック委員会との交流に従事するが、入職一年目の上述の体験は私のスポーツ交流の基本となった。

1979年には中国の国体に当たる中華人民共和国大運動会(中国大運動会)が開催され、日中スポーツ交流十周年記念の返礼として日本代表団が中国に招待された。

以降、日中スポーツ交流は体協と中華全国体育総会の間で急速に発展していく。毎年開催された日中ジュニア交流もその一つで、私はそこで唯一無二の中国の友に出会うことになった。仕事が終わり夜となれば、中華全国体育総会職員の彼と二人で酒を酌み交わし、語り合った。

資本主義と共産主義についても本音で激論した。当時、上司からは政治の話は禁句と言われていたが。我々は政治を超えた友となった。お互いに窮地にあれば助け合った。振り返れば私が助けてもらった方が多かった。

しかし、現在、日本スポーツ協会の報告によれば、その交流はかなり小規模なものになっている。そこに私は寂しさを感じるとともに、日中スポーツ交流の復元が日本と中国の政治的関係に重要であると思うのである。

中国大運動会(中国全国運動会と一般は称している)は四年に一度のビッグイベントである。中国全土からスポーツ選手が集まるのだから想像に難くない。その第15回大会が今、広州を中心に行われている。しかし日本の報道はほとんどこの大会に触れることはない。

かく言う私も国際オリンピック委員会(IOC)の情報で知った次第。IOC会長コベントリーと名誉会長のバッハが開会式に招待され、習近平と会談しているのである。我が友も同席したが、重要なのは、その席で中国国家主席が「オリンピック精神と中国とIOCの強固な関係を高く評価し、中国は常にオリンピック精神をしっかりと実践し、守り、促進してきた。中国はIOCとの協力をさらに深める用意がある」と明言したことだ。

そして両首脳は「スポーツへのいかなる政治的干渉もあってはならないこと」を強調した。

習近平 コベントリー バッハ 2025-11-14 7

翻って日本では初の女性首相が人気を得て、国会答弁で野党の質問を捌き、それを賞賛する動画でYouTubeは溢れているが、その内容たるを冷静に見れば、手元の経済、足元の軍事、そして目先の利益についてだけである。YouTube番組では女性首相の活躍を強調するが、全て日本国内の家計簿の話にしか見えない。日本の国民スポーツ大会にIOC会長を呼んで、スポーツ外交から世界の未来を志向する発想などは毛頭ない。

以前から中国はIOC会長をスポーツ国の大統領としており、その接遇は国賓待遇である。我が国の首相には笑顔を見せることの少ない習近平もIOCには満面の笑みである。かたや日本はIOC会長を国務大臣レベルで迎えるために多大な労苦が必要となる。

中国の総合スポーツ大会である第15回全国運動会の開会式は、11月9日広州の「広東オリンピックセンター」で行われた。既に一部競技は先行して始まっており、11月21日まで、34競技419種目に14252名の選手が参加し、粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)各地で競技が展開される。(香港経済新聞)

開会式の映像を見るとオリンピックを上回るほどの熱気を感じる。各省や機関の代表団が行進する姿は国のパワーを感じさせるものだった。

中国全国運動会 2025-11-13 22

日本の国民スポーツ大会(元国民体育大会)は毎年開催され約2万人が参加する。来年は青森県、再来年は宮崎県(冬大会は分散開催)と都道府県の持ち回りで開催されている。来年は第80回を迎える。戦後の日本に生きる希望を与えたイベントとしての伝統は誇るべきものであり、引き継がれるべきものだろう。

体協職員となった頃、旅行会や運動会では「若い力」を熱唱したものだ。先輩から受け継がれてきた伝統でもあった。第二回国民体育大会のために作られた歌である。その一節「僕の喜び君のもの 上がる凱歌に虹がたつ」には自他の勝利を超えた喜びが活力となることが示されていた。

後100日を切ったミラノコルティナ五輪のために、イタリアのタヤーニ副首相兼外務・国際協力大臣がウクライナや中東地域の紛争を含むすべての戦争に対するオリンピック休戦決議への中国の支持を要請した。

外交部の郭嘉昆報道官は10月9日の定例記者会見で、「オリンピック休戦の伝統は長い歴史を持ち、人類の平和への願いや、互いに助け合うという美しい理想を担っている。これは国際平和と安全を維持するという国連の本来の使命と相通じるものである。現在の世界は平和でもなければ、平穏でもなく、地域の安全保障をめぐる緊張が次々と発生している。中国はオリンピック休戦決議を契機として、意見の相違を対話で解消し、協力を対立に取って代え、相互理解を深め、世界の平和と発展を維持することを支持する」と述べた。

コロナ禍の世界に勇気を与えるべく東京2020を開催した日本がスポーツ外交に覚醒する必要がある。

日中関係もそこから劇的な変貌を遂げる可能性がある。

(敬称略)

2025年11月14日

明日香 羊
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編集好奇
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日本のスポーツ外交の鍵を握るのは橋本聖子さんかと思う。
トップアスリートから政治家になった時には「政治に支配されてはいけない」とエールを送った。
今年6月JOC会長に就任した彼女は「スポーツは政治に遠慮してはいけない」と自ら語った。
スポーツ外交を推進する覚悟と見た。
天涯にある私の望みは、日本がスポーツ外交を復活させ、世界平和に貢献することだ。

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創作大賞2025(note)に五作品を応募しました。その経緯をお読みください。
https://note.com/olympism/n/nc64126028a80
古希の旅 琴平慕情 初の小説的紀行文 必見!
https://note.com/olympism/n/n935d8b2c4f3d
橋本聖子が新会長 JOCにいま何が?(日刊ゲンダイ) 春日にしか書けない深層
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/5337

noteでスポーツ思考の人気記事をマガジンとしてまとめました↓
https://note.com/olympism/m/m58da6016e53d

noteで「春日良一の哲学するスポーツ」YouTubeChannel版をまとめました↓
https://note.com/olympism/m/m584856513250

IOC会長選 7候補マニフェスト完全採点
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/5241

IOC会長選挙の結果についてゲンダイでも論じました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/369469
コベントリーの勝利にプーチンが反応しました。融和外交に入っていくか?

「2024パリ大会 徹底、実践五輪批判」日刊ゲンダイ連載、全18話
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4728/495

Forbes Japanで開会式について五輪アナリスト春日良一が分析。詩的スポーツ思考。
https://forbesjapan.com/articles/detail/72709

YouTube Channel「春日良一の哲学するスポーツ」は下記から
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オリンピックやスポーツを考えるヒントにどうぞ!

『NOTE』でスポーツ思考
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次号はvol.540です。

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