冬季五輪に夏季五輪競技を持ってくるの案 〜地球環境問題こそがオリンピック危機のわけ〜
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冬季五輪に夏季五輪競技を持ってくるの案
〜地球環境問題こそがオリンピック危機のわけ〜
11月16日にテレビ朝日のグッド!モーニングが取り上げた「夏の五輪競技を冬に移行」についてその取材を受け様々な角度から解説した。テレビでの放送はうまく纏めていたが問題の核心にまでは迫れなかった。その背景を含めてこの問題を改めてスポーツ思考したいと思う。
論点はオリンピックの様式を根本的に変える挑戦になると考えるからだ。
そもそもこのテーマはIOCがリリースしたわけではなく、コベントリーIOC会長が新たに儲けた未来適合部会(Fit For The Future)の中から漏れてきた。
果たして冬季五輪に夏季競技を移行する目的は何か?
共同伝は11月13日に「IOCが、夏季五輪の一部競技の冬季大会への移行について、本格的な検討に入ることが12日、複数の関係者への取材で分かった。肥大化する夏季大会のコスト削減が狙い」としている。
しかし、冬季五輪の競技種目改革がクローズアップされたのは第10代国際オリンピック委員会(IOC)会長選(2025年3月挙行)のキャンペーンの流れで、候補者の世界陸連会長でもあるセバスチャン・コーがクロスカントリーを冬季五輪に入れ、冬季五輪へのアフリカのアスリート参入を促すことを提示した時からである。
彼はその時点で2034年の開催地となるソルトレークシティでその実現にこぎつけるべく順調な調整を行なっているとまで語っていた。その展開に同じく候補者の一人であった国際自転車連盟会長のラパルティアンは2030年のフランスアルプスでシクロクロスを採用する意向を示していた。
いずれも現在、夏季五輪に含まれていない競技である。肥大化する夏季五輪のコスト削減には当たらないことになる。
そこで、共同伝では「IOC関係者は、柔道やボクシングなどの格闘技のほか、バスケットボールやバレーボールなどの屋内団体球技も候補になるとの見方を示した」と辻褄を合わせているが、この問題の本質を外している。
クロスカントリーやシクロクロスが冬季五輪に加わることは夏季五輪のコスト削減に全く関係ない。冬季五輪のコスト増加になるだけだ。
日本のメディアは常に「お金」で考える。その結果、新たなことを起こそうとするとそれは「お金」のためであるとしか考えられないのだろう。
最も本質的な課題は地球環境問題なのだ。
2023年10月にIOCは「気候変動の影響により、2040年までに雪上競技を開催できる国はわずか10カ国になる」と発表し、将来の冬季五輪開催の危機と捉えた。
バンクーバー2010、ソチ2014、そして平昌2018はいずれも人工雪にある程度依存していたが、北京2022では、人工雪の使用量は前例のないほど多かった。スキー場を覆うために、100台以上の造雪装置と300台の人工降雪機がフル稼働した。
時の会長バッハは「これらの数字から、気候変動が冬季スポーツに及ぼす劇的な影響に早急に対処する必要がある。気候変動の影響を考慮し、冬季オリンピックを適応させる必要がある。ローテーションシステム、プログラム構成、氷上競技と雪上競技の異なるニーズなど多くの点について検討しなければならない」と明言していた。
冬季五輪開催地を複数決めてそこを巡回する方式まで示唆していた。この時点で既に五輪が過渡期に入ったことは明白である。
さらに夏季五輪開催に情熱を燃やすサウジアラビアやカタールは夏季五輪の開催時期の変更を申し立てている。同地では12月とか1月がアスリートの季節になるからだ。五輪自身を固定観点に囚われず見つめ直す時だ。
2029年に冬季アジア大会を招致したサウジは未来都市トロヘナのネオムを計画している。実際にはこの開催は壁にぶち当たっているものの、もしそれが実現すれば夏冬同時開催も夢ではなくなる。
そもそも昔からオリンピックに冬の競技はなかったが、ロンドン1908(夏)にフィギュアスケートが組み込まれて垣根がなくなり、アントワープ1920(夏)ではそれにアイスホッケーが加わった。かつては夏季五輪に冬のスポーツが実施されていたことになる。
その後、1924年IOC後援の国際冬季競技大会をシャモニーで開催して、冬のスポーツだけの大会をテストした。そして、それが成功したので、後出しで冬季五輪としたのが、シャモニー1924である。冬季五輪の始まりだ。
オリンピック憲章で、冬季オリンピックの競技は「氷上または雪上で行われるもの」として夏のオリンピックと冬のオリンピックの差別化し、それによって図らずも二つのオリンピックはブランド化したのであった。
そしてリレハンメル1994(冬)から冬と夏は2年交代で開催されることになり、それによってオリンピックマーケティング機会を増大させた。
今、IOCが目指すのはこのマーケティングのさらなる増大であったとしても、コストの削減ではない。オリンピックマーケティング創始者の一人と言えるマイケル・ペインは雪と氷のイメージを「薄める」柔道やボクシングなどの屋内競技の冬季五輪参入には反対している。しかし、クロスカントリーもシクロクロスも雪と氷のイメージを薄めることのない競技形式に変貌すれば夏季五輪競技に入っていないのでイメージの損傷は防げるかも知れない。氷上や雪上を走る競技にするのである。(羊論)
ミラノコルティナ2026(冬)は8競技116種目、ロサンゼルス2028(夏)は36競技351種目である。アジェンダ2020で冬は100種目、夏は310種目としたのが夢のまた夢に思える。五輪は肥大化を止めようとしていない。
このことこそ追求すべき一点だ。バッハへの詰問である。
IOCの本音を紐解こう。
地球環境問題には最大の関心を持ち、そして献身する。そのために冬季五輪の開催可能性をとことん追求していく。しかし万が一、冬季五輪が開催できないほどの地球環境になったら、つまり雪が降らない状況になったら、その時でも冬のオリンピックができるようにしておきたい。そのためにそのモラトリアムとして、クロスカントリーもシクロクロスも貴重だろうし、柔道もバレーボールも必要なのだ。
オリンピックが2年に一度開催されるようにした1993年のオリンピックマーケティングの枠組みを維持しながら、雪上のオリンピックだけに頼らない冬季五輪を模索しているわけである。
冬季五輪のコンセプトを「氷上または雪上で行われる」競技から「冬に行われる」競技に変革すれば、新たな冬季五輪と夏季五輪のブランドができる。夏冬の種目を固定観念にとらわれずに種目数を近づけることで新たなオリンピックマーケティングの目論見が見えてくる。
冬季五輪を強化することによって、オリンピックマーケティングを変革し、増収を図り、それを地球環境問題改善に繋げる。オリンピックがどれだけ地球環境問題に貢献できるかが鍵である。
IOCの考える「お金」は、日本のメディアの考える「お金」と違うのだ。

IOCは30年大会以降の五輪開催都市に、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを課す。その実現性を測る上で、脱炭素化へ高い目標を掲げるミラノコルティナ2026は試金石となる。
ミラノコルティナ2026ほぼ天然雪で実施する。大量のエネルギーを消費する人工降雪に頼らず、大半の競技を既存の施設で行うので環境破壊も抑えられる。
とはいえその一方でコルティナダンペッツォは、現状のままなら20年後には五輪を実施できなくなるだろう(カナダ・ウォータールー大教授ダニエル・スコット)という科学的表明もある。
ミラノコルティナ冬季五輪以降に冬季五輪の実施種目の議論が熱くなるだろう。
「選手が声を上げることは非常に大事だ。特に若い世代にとっては、われわれのような学者よりもメダリストの言葉の方が説得力を持つ。選手の多くは自然豊かな環境で生まれ育ち、それが失われていっていると実感を込めて話すことができる。五輪という大舞台は、環境保全を唱える格好の場でもある」(上述ダニエル・スコット)
五輪がどれだけ地球環境問題解決に貢献できるか。そのためのオリンピック様式変換が試みられなければならない。
(敬称略)
2025年11月27日
明日香 羊
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編集好奇
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上述のダニエル・スコット教授(地理・環境管理学)が率いる国際チームによる研究結果では、世界の開催候補都市は、今世紀末までに2~4.4℃の気温上昇にさらされる見込みとのこと。
結果、「温暖化ガスの排出量を地球規模で劇的に削減しない限り、冬季五輪を安全かつ現実的に開催できるのは今世紀末までに、過去の開催地のうち日本の札幌だけとなる」ことが判明した。
札幌が中心となって冬季五輪を変え地球環境問題に貢献していくのであればそれはワクワクする話ではないでしょうか?
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