FIFAワールドカップ2026をオリンピズムから思考する(3) 〜チュニジアvs日本、なぜメキシカンは日本を応援するのか?〜

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FIFAワールドカップ2026をオリンピズムから思考する(3)
〜チュニジアvs日本、なぜメキシカンは日本を応援するのか?〜

6月21日、メキシコのモンテレイで行われた日本とチュニジア試合は4−0で日本が勝利を収めた。これで予選リーグ突破に向けて有利な勝点3を得られた。サムライブルーを応援する日本列島は歓喜に包まれた。

行きつけの蕎麦屋の店員さんの話。
「あの日、12時過ぎまで満席でした。ところが1時過ぎると誰もいなくなりました」

しかし、応援していたのは日本人だけでなかった。

モンテレイの競技場のメキシコの人々も皆、ハポンを応援していた。

なぜ彼らは日本を応援したのか?巷間この疑問が渦巻いている。

私はその原理を1968年のメキシコ五輪、日本代表とメキシコ代表の三位決定戦に見た。
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日本が2−0で銅メダルを獲得した歴史的試合はメキシコはアステカスタジアムで行われた。日本のGK横山の攻守でメキシコのPKを止めた時、観客10万人が大騒ぎ。以降、彼らは日本代表を応援し始める。ハポン!ハポン!観客が試合に参加していた。

当時私は中学一年生。時差の関係で、サッカーの試合は朝、登校前に試合終了の笛が鳴る。左ウィングの杉山からのセンタリングを釜本が胸トラップからゴールに突き刺すシーンは今でも忘れられない。

同時にメキシコの観客が自国の代表を諦めて、遠くアジアからやってきた日本に声援を送る有様が将来をサッカー選手と決めていた私の心から離れることはなかった。

スポーツは国境を超える。そう思った。しかしなぜメキシコの人々は日本を応援したのか?

それは日本サッカーのひたすらボールを追いかける姿にサッカーを愛する原点を見ていたからではないか?この時の日本代表は歴史に残る銅メダル獲得とともにフェアプレー賞も授与している。

ファウルを犯すことなくひたすらボールを追いかける日本のサッカー選手。そしてチーム一丸となって勝利を目指す姿。ただ強いということとは違う、サッカーの求めるべき本質を表象する彼らにメキシコの観客はむしろ「代表」を感じたのだ。

江戸初期の支倉常長の訪墨など日墨交流の歴史は長いが、400年以上の歴史が、近年の日本のポップカルチャー世界伝搬とともに、確固たる親日感情がメキシコ人の心に根付く。そこに自らを「代表」してくれるに相応しいサムライブルーが登場したのである。

チュニジア戦でのメキシコ人の日本応援は1968年の五輪サッカー三位決定戦から繋がっている。

釜本ゴール 2026-06-25 15

1998年のW杯に日本が初参戦する直前、私はフランス入国前にイスラエルに居た。パレスチナとイスラエルのスポーツ交流の礎を築く調査を行うための滞在だった。ホテルからシオンの谷に降る道すがら、オープンレストランの大きなビジョンにW杯の激戦が展開されていた。ブラジルとどこかのチームだった。そこにいる客たちは全てがブラジルを応援していた。みんなブラジルを応援するのだと驚いた。当時のブラジルは誰もが応援したくなるサッカーチームであったのだ。

ロナウド、リバウド、ベベットに、カフーとロベカル。1998年フランス大会のブラジルは、各ポジションに当時世界トップクラスのスターを並べながら、名将ザガロの下で守備バランスも重視した「強くて華がある王者」だった。圧倒的な個の才能が、常に優勝候補の重圧と隣り合わせで戦う姿は、ただ巧いだけでなくドラマをまとった存在として、多くの人に「憧れ」として記憶されている。

怪物級の個と完成度の高い組織が同居し、「楽しさ」と「強さ」を同時に見せたあの時のブラジル代表の魅力は、実は今の日本代表にも重なる。

オランダ戦では二度のビハインドから2−2に追いつきながら、激しい当たりの中でも抗議や遅延行為に傾かず、プレーで主導権を奪い返した。

チュニジア戦でも4−0と大差をつけながら、不要な挑発や無意味なファールを避け、最後まで集中して守り切る姿勢を貫いた。その振る舞いが、日本を「強くて礼儀正しい代表」として人々の心に根付き、世界からの支持へとつながっている。

モンテレイのスタジアムに響く歓声はそこにいる人々がサッカー愛の原点に贈る讃美歌なのであった。

(敬称略)

2026年6月25日

明日香 羊
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編集好奇
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今の日本代表については、海外メディアも「実力を過小評価してはいけない」チーム、「決勝トーナメントで当たりたくない相手」と評価をしています。
「フェアで強い日本サッカー」を掲げて長く取り組んできた日本サッカー協会(JFA)の努力が実りつつあります。
明日の午前8時(日本時間)キックオフの日本vsスウェーデンは何を教えてくれるでしょうか?
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「新・実践五輪批判」連載完結!
https://www.nikkan-gendai.com/?p=news&column=5471
ミラノコルティナ冬季五輪を機に地政学的な視点にオリンピズムのプリズムを入れて世界を見るという哲学的挑戦をしております。どうぞご高覧ください。

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コメント

  • 何か心温まる一文

    拝見しました。
    貴兄自身の体験談も織り交ぜて、何か心温まる一文でした。

    敵味方を超えて、相手チームのスポーツの美や義に応援してしまう、
    この人類普遍の感情は、オリンピアの感情ですね。
    私はサッカー少年ではなかったので、メキシコオリンピックの時は
    杉山と釜本、それに銅メダルということしか覚えていませんが、
    東京五輪1964の時の柔道で、ヘーシンクが神永に勝利した後の所作に
    日本中が「完全に負けた」と思い、称賛していたことを思い出します。
    当時は小学四年生でしたが、この感じ、子どもにもよくわかりました。
    何か人類的な勝利と正しさと美の感じ…
    スポーツの持っているイデアや啓示のような瞬間ですね。



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