vol.307 オリンピズムは政治を超える~インドNOCの資格停止~

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  Sport Philosophy 

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 オリンピズムは政治を超える
 ~インドNOCの資格停止を思考する~
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 ソチ冬季五輪が始まった。と同時に、相変わらずのメダル狂想曲
がメディアで奏でられているらしい。「羽生が一位!日本フィギュ
ア団体好発進」などと朝からテレビがまくしたてていて、チャンネ
ルを代えても同じトーンでどこの番組も「がんばれ!ニッポン」を
まくしたてる」と、知人のジャーナリスト大兄がお冠であった。

 私はテレビでは五輪を見ないことにしているので、その不快感か
らは隔離されている。しかし、五輪周辺の場には漂っている。朋友
が再びIOC副会長に就任したと朗報が届き、自らのことの如く喜
んだ。彼が五輪運営のトップにいる限り、五輪運動の行く末はコン
トロールできると思うからだ。

 2月7日の五輪開会式で、インド代表団が五輪旗の下での行進と
なった。派遣母体である国内オリンピック委員会が存在しない場合、
しかし、それでも出場すべき選手がいるのであれば、平和の使者と
して五輪の場に招かれる。

 五輪運動はナショナリズムを超克するという原理を表現している。

 インドNOCの資格停止処分は、昨年12月4日、IOC理事会の
決定であった。インドの国内オリンピック委員会(NOC)を資格
停止処分にしたと発表し、財政面など一切の支援を打ち切った。
NOCの問題を担当するミロ部長は、役員改選に政府が不当に介入
したためと理由を説明し「選挙プロセスは汚された。現状は問題ば
かりだ」と述べたとされている。

 詳述すると、ニューデリー(New Delhi)の裁判所は派閥争いが
続くインドのNOCに、同国政府のスポーツ規定にのっとって選挙を
行うように命じていたが、そのことに対しIOCは、政治から独立し
た自律を奨励する五輪憲章に応じて、期限(2013年12月4日)まで
に対応するようにインドのNOCに要請していた。にもかかわらず「
インドのNOCは五輪憲章とそれが制定する法規に応じず、IOCへの期
限内の報告を怠った」(マーク・アダムス広報部長)

 国内五輪委員会の役員選挙に政府が干渉することを回避する処置
として、IOC理事会がインドNOCの資格停止処分を決定したわ
けで、オリンピック憲章第27条ならびに第28条の提示するNOCの
使命と役割ならびに構成の規定に対して、インドNOCが規律違反
を犯した結果である。

 中でも、NOCの構成についての条項、28 4.「 政府もしくはそ
の他の公共機関はいかなるNOC のメンバーをも指名してはならない」
に抵触したと思われる。

 この処置は新IOC会長であるトマス・バッハ政権であればこそ
の厳しい審判であった。トマス・バッハは第125次IOC総会の開
会スピーチで見事なまでにスポーツ政治家に伝えた。

 2月4日にソチで開催された同総会で、トマスは素晴らしい演説をうった。「マンデラ大統領が示したように世界の政治家はスポーツに限りないパワーがあることを知らなければならない」IOC会長が初めて世界の政治リーダーに向かって発したオリンピズムである。

 彼のリーダーシップの中でオリンピズムの理想が実現する予感す
らさせるものだった。

 NOC役員選出に政府が関与することが明白になれば、IOCと
してそれにきちんと対応しなければならない。明らかな政府干渉が
あったのならば、オリンピック憲章はいかなる政府に対してもNOと
いわなければならない。しかしそのことを実行するにはオリンピズ
ムへの確固たる信念が必要である。それを可能にしたのがトマス・
バッハだった。

 果たして、かくなるIOCに対応する日本スポーツのポリティクスは
いかなるものか?インドというのは日本スポーツにとって独特の存
在である。それも政治とかなり深い関係の中でそうである。今では
誰もが忘れてしまったようだが、日本スポーツ界が戦後復帰できた
のはインドのネール首相のおかげだった。1951年第一回アジア
競技大会に多くの反対を押し切って日本代表選手団の招請を決めた
のである。

 敗戦国日本の国際スポーツ界への復帰は、その後の日本の復興に
どれだけ大きなステップとなったことだろうか?その時に思いを魂
に感じ、今こそ日本はインドNOCのためにその資格停止を解放す
るスポーツインテリジェンスを発揮する時である。インドNOCの
正常化を支援する中でインド政府にオリンピズムを知らしめ、同時
にIOCにはその正常化への意志を伝える。

 かくして日本のオリンピックムーブメントはスポーツインテリジ
ェンスになり、バッハ会長が進めようとするスポーツで平和のオリ
ンピックポリティクスの推進を支援することになるのである。

 インド選手団が五輪旗の下で行進する。その佇まいにそのような
思いをいだいたのであった。
                          (敬称略)

2014年2月10日  

                        明日香 羊         
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                                  ────────<・・

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編集好奇
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 トマス・バッハのIOC政権は磐石な船出をした。五輪開会式で
の会長スピーチもさることながら、先立つIOC総会での開会スピ
ーチにはバッハの五輪哲学が躍動している。大物IOCである中国
の于再清氏がIOC副会長に返り咲いたが、彼が先の会長選に出る
気がなかったのも納得である。
 バッハがサマランチ会長が達成できなかったノーベル平和賞受賞
を手にする可能性も充分にある。
 「オリンピック競技大会が世界中の政治家や指導者に伝えたいメ
ッセージは、オリンピック精神を利用することでそれぞれの社会を
より良いものにできることを理解することである」
 これは明らかにオリンピズムを信ずるものの言葉である。
 
 皆様のスポーツ思考を期待します!

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  考?ご期待
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 次号はvol.308です。 
 (1998年からの400号を目指して あと92思考?!)

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