動物愛護のオリンピズム 〜さらば近代五種〜

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動物愛護のオリンピズム
〜さらば近代五種〜

ロイター通信によると、動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が5月5日、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、今後の五輪から全ての馬術競技を廃止すべきとの書簡を送っていたことを明かした。

以下、ロイター伝。「東京2020で行われた近代五種で、アニカ・シュロイ(ドイツ)が馬術の競技中に馬の扱いに苦慮した際、キム・レイズナー監督が馬を殴打したことが大きな問題になった。国際近代五種連合(UIPM)は2028年ロサンゼルス五輪より近代五種から馬術を除外することを決定している。PETAのキャシー・ギレルモ副会長は、ロイターへのメールで『五輪は長い年月をかけて進化してきた。かつては(ヨーロッパの伝統競技)クロッケーも競技に含まれていたが、価値は変化するもの。今こそ、IOCはそれを認識すべきだ。私たちは、IOCに圧力をかけている。8月には書簡を送り、大会から全ての馬術競技を廃止するよう求めた』と述べた。五輪の馬術競技では、総合馬術、障害飛越、馬場馬術の各種目が行われている」

近年、近代五種は五輪競技から除外される危機に遭遇してきた。それは動物愛護の視点からではなく、商品価値の視点からであった。近代(モダン)と名の付く五つの競技は、射撃、陸上、フェンシング、競泳、馬術。五輪創始者のクーベルタンが、「近代」五輪に相応しい競技として考案したというが、時代に適合せず、人気を得るには相当の努力が必要であった。皇帝ファン・アントニオ・サマランチ閣下(第7代IOC会長)の息子を同連盟の第一副会長にして、なんとか加盟国を100まで伸ばし、クーベルタンのレジテマシーを強調してここまで生き残ってきた。

馬術を除外したら近代五種を「100%止める」とは、東京2020の近代五種男子金メダリストジョゼフ・チューン(26、英国)。変更に反対するために結成された組織ペンタスロン・ユナイテッドは、UIPMの協議プロセスについて「ひいき目に見ても幻想」と批判し、国際オリンピック委員会(IOC)に介入を求めている。4月に実施した310選手(現役は168選手)への調査で95%以上がUIPMのやり方に不満を持ち、馬術が除外されれば競技から離れるだろうという回答は77%に上ったと明らかにした。(ロイター伝)

馬なしの近代五種はあり得ないとなれば、近代五種自身を五輪競技から除外する方向をIOCは検討せざるを得ないだろう。昨年3月にバッハIOC会長が主導し、IOC総会が決議したアジェンダ2020+5では、スポーツの進化を求めており、バッハ自身が北京冬季五輪でスピーチしたように彼自身、スノーボードの順位や国境を超えた競技内での友愛の具現化に感動しているし、東京2020でのスケートボーダーが見せた順位よりもチェレンジへの相互賞賛のあり方はまさにオリンピズムの具現化に相応しいのである。となれば、馬をバッシングしなければ成立しない競技というのは前「近代的」競技として、除外されるべきリストに入るのは当然だ。

しかし、近代五種が「キングオブスポーツ」と欧州で呼ばれてきた伝統は伊達ではない。それを証明するのがアスリート魂だ。2016年リオ五輪の近代五種男子金メダリスト、アレクサンドル・レスン(33、ロシア)がウクライナを侵攻した母国に反対し、ロシア国旗の下では競技しない意向を示した(BBC放送電子版伝)。ロシアの選手たちがウクライナ侵攻に沈黙する中、堂々の決意表明である。

そもそもクーベルタンが近代五種を考案したのは、古代オリンピックの五種競技(レスリング・円盤投・やり投・走幅跳・短距離走)にならった近代らしい五種競技で、近代の軍人が備えておくべき資質、フェンシング、水泳、馬術、ピストル射撃、ランニングを合わせた競技となったという。理想の軍人を作る運動が、理想のオリンピアンを作ったとも言えるわけで、誠にこの世は面白い。

レスンがラストサムライとなる可能性がある。

馬術

オリンピックはクーベルタンが創始したが、残すべきは競技ではなくオリンピズムという精神であることを想起すれば、近代五種との別れは必然である気もする。

ただし、馬術競技を除外せよというPETA(愛護団体)の主張は、慎重に賢察しなければならない。なぜなら馬術における馬と人の一体化は必ずしも全否定されるものではないからだ。特にパラリンピックの馬術は乗馬セラピーから発展したスポーツであることを忘れてはならない。「より速く、より高く、より強く」というオリンピックモットーには東京五輪2020から言葉が一つ加わった。「ともに」である。オリンピックも馬と(自然と)「ともに」あっていいのではないか?

さらば、近代よ!我らは未来に向かうものなり。
自然との共存を求めて。

(敬称略)

2022年5月10日

明日香 羊

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編集好奇
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スポーツは様々な遊び、賭け事から欲情を削ぎ落としてこそ精神の器であり得る。
本当のスポーツを見極めなければならない。

春日良一

【ダイヤモンドオンライン】
北京五輪の「オリンピック休戦」をむげにしたロシア、
IOCバッハ会長の葛藤
https://diamond.jp/articles/-/298005

【ゲンダイデジタル】
IOCへの諫言 五輪憲章から矛盾を糺す
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495

日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575
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次号はvol.461です。

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