山下泰裕はJOCを変革できるか? 〜オリンピックムーブメントの視座〜

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山下泰裕はJOCを変革できるか?
〜オリンピックムーブメントの視座〜

「『切り札』山下泰裕は日本柔道界を変革できるか」(以下、「切り札」)という著作がある。長年柔道界を取材してきた木村秀和が現役時代から応援してきた柔道家、山下泰裕に全日本柔道連盟会長としての不甲斐なさを嘆き叱咤する本といえばいいだろうか?

暴力指導がなくならない日本の柔道界の現状が明示され、その改革の旗手となるべく期待を背負って登場した山下泰裕の及び腰改革に意気消沈し、コロナ禍のステイホーム中に、これまでの取材記録をまとめ上げて、柔道界改革の提言をするという意欲作である。

山下が日本オリンピック委員会(JOC)の会長に就任した2019年以来、彼の評価は大きく二つに分かれる。極言すれば無能論と有能論。山下を思うが故の無能論が「切り札」だが、私には全く逆の有能論も聞こえてくる。それはJOCの現場からの声。

山下泰裕

「あんなに働く会長を見たことがない」「職員が帰っても一人勉強している」「スポンサー企業など対外的な受けは前任者とは雲泥の差だ」など。

私自身もあるスポーツ交流のパーティーで一緒になった時に、山下の心を込めた挨拶が胸に残る。「スポーツは国境を超えて人と人を繋ぎます。そのために私は自分のできる範囲で精一杯働きます」

一方で、日本体育協会創設者の嘉納治五郎への敬愛ぶりは確固たるものであり、「精力善用、自他共栄」の思想については信仰と呼んでいいほどの領域に達している。そのような人間がなぜそれほどに無能論を奏でられなければならないのか?それが私の長年の疑問であった。

「切り札」はその疑問に答えてくれた。

1)山下が2017年に全柔連会長に就任した時、柔道界は多くの問題を抱えていた。その最たるものが様々な現場で起こる「暴力」であり、「体罰」であり、ハラスメントの問題であった。その解決にいよいよ山下泰裕が乗り出してくれた!最後の救いだ。と期待された。しかし、現実は厳しく、柔道人口は減少するが、暴力体質は変わらないというわけだ。ジェンダーイコーリティから見ると歴然とその体質が明確化される。2000年から21年にかけて6大会で柔道日本代表が獲得したメダル数は男子26、女子29、直近世界選手権では男子29、女子38と女性上位にもかかわらず、男子を呼ぶには「〇〇、五段」とするも、女子を「〇〇女子五段」と呼ぶ。五段という段位の質は同等である。全柔連の役員数も男子3に対して女子1の状況。

山下は何をしている?

2)2019年にJOC会長になった山下にもその期待と失望の目は向けられる。2021年3月21日、東京2020組織委は「海外観客の受け入れ」を断念した。その時、JOC理事の山口香は「アスリートが十分な練習ができない状況でのオリパラ開催はアスリートファーストではない。延期すべき」とメディアに吐露する。それに山下は「JOCの理事がそういう発言をするのは極めて残念」と発言した。

山下は何をしている?

3)アテネ五輪(2004)の時、韓国コーチが自国選手をピンタした。カナダの女子選手の眼前での出来事で、時の国際オリンピック委員会(IOC)会長ロゲは、「コーチ席からの排除と、IDカード剥奪」という制裁を与えた。そのことについて山下は「選手村追放、自国送還といった処分となれば、コーチの人生を大きく変えることになる」と発言した。

山下は何を考えている?
このようなペナルティーに甘い性格が、日本柔道界からの暴力追放を阻んでいる。

そう言われてみれば、確かに山下のリーダーぶりは無能に見えるかもしれない。しかし、そこにオリンピックムーブメントという視座を構えたら、見方は大きく違ってくるのではないか?

1) 柔道界からの暴力追放とグッドガバナンス
山下は、2013年3月女子柔道強化選手への暴力が問題化したことで全柔連が新たに設置した「改革・改善実行プロジェクト」の責任者となり、以来、日本柔道界に蔓延る暴力問題の解決のために邁進してきた。結果がなかなか出ないと言われながらも、対処療法は奏効した。集めた人材の優秀性にも支えられた。今は根治に至るまでの努力を続ける状況にあると見る。オリンピックムーブメントは教育である。体制を変えるとか、制裁を強化するということ以上に、柔道とは何か?という哲学を学ぶことを地道に忍耐強く進めるしかない。それが根本的な治療になるのだ。と山下は心の底で思っているのだろう。教育には時間がかかる。しかし、その努力は続けるべきだろう。

2) 山口理事への反論
2021年3月の時点でオリンピックムーブメントは東京2020の開催を諦めていなかった。その中で開催国の国内オリンピック委員会(NOC)は、ホストNOCとして開催への責任があり、それをJOCとして決めている以上、その方針に従うのがJOC理事としてのあり方だろう。JOC理事でありながら、JOCの決議は間違っている。私だけは正論を吐く。という行為こそ問題ではないか?吐くのであれば、JOCに対してであり、メディアに対してではない。因みに、筆者も多くのジャーナリストも、故に世間も誤解しているが、山口香はオリンピアン(オリンピックに選手として参加した称号)ではない。彼女の出場したソウル五輪(1988年)の柔道女子競技は、あくまでも公開競技(デモンストレーションスポーツ)であった。正式種目になるのは次の1992年バルセロナ五輪からである。山口がオリンピックをイベントとして冷たく見ることができるのは、それが故かもしれない。

3) 五輪の特殊空間
筆者は柔道界のプロジャーナリストかもしれないが、オリンピックは経験していないのだろう。オリンピックにおいて、「IDカードを剥奪される」ということがどれほどのことは分かっていないのではないか?それは山下も同様だが。正しく言えば「AD(資格認定)カード剥奪」であるが、それは、選手村には居られない、開催国にいても何もできないことと同値である。査証がないのと同様の状態である。山下が弁明しているまさに「選手村追放、自国送還」と同様の制裁をロゲ会長は行なったということである。

山下の柔らかい制裁への対応や人への接し方は、「切り札」の筆者が落胆する部分であるが、「柔よく剛を制す」表れかもしれない。が、それだけでは不十分だと言っているのは嘉納治五郎自身であるとは筆者の言でもある。柔能剛制は柔道精神をよく表現しているが、それが全てではない。例えば、自らの一点に相手の力を集中させて、そこを支点に動けば大きな力となる。それは「柔能剛制」という思想とは違う。

「切り札」山下泰裕に改革の旗手を求めるならば、「柔能剛制」以外の技の使い手が必要だと思うのである。自らの一点に相手の力を集中させて、そこから投げ飛ばす。あるいは蹴りを入れる。かような策士がいなければ国際柔道連盟のビーゼル会長には敵うまい。ビーゼルは国際柔道連盟(IJF)主催の大会にロシアの選手を受け入れている。もちろん国旗も国歌も使用させないで、IJFの旗の下に。一方、山下はロシアの侵攻を受けたウクライナのスポーツ界支援のためIOCが設立した義捐金基金へ、JOCとして10万ドル(約1200万円)を寄付している。しかし、JOCのウエブサイトにこの件に関する記載が全くない。あるのは競技の活躍ばかりだ。

「私は心配なのである。というのも日本の柔道人口が年々減少し、ついに10万人台、しかもそれを割ろうかというまでになってしまっている。そして最後の切り札として全柔連会長に就任した山下泰裕氏のもとでも暴力事件が減らないどころか、改革に背を向けた姿勢が目立つ。いったいどうなってしまったのか」(木村秀和)

30年余にわたって日本柔道界を見続けてきた木村の叫び。「切り札、山下よ、目を覚ませ!」しかし、私は言いたい。ジャーナリストよ、目を覚ませ!オリンピックムーブメントの裾野はかなり広いものなのだ。

(敬称略)

2022年7月8日

明日香 羊

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編集好奇
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安倍総理が銃弾に倒れたとの速報!
やはり武器はさらばだ。

春日良一

『NOTE』でスポーツ思考
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【ダイヤモンドオンライン】
北京五輪の「オリンピック休戦」をむげにしたロシア、
IOCバッハ会長の葛藤
https://diamond.jp/articles/-/298005

【ゲンダイデジタル】
IOCへの諫言 五輪憲章から矛盾を糺す
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495

日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
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