スポーツの世界地図が平和を描く理由 〜なぜ国際オリンピック委員会(IOC)がNGOでNPOであるか?〜

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スポーツの世界地図が平和を描く理由
〜なぜ国際オリンピック委員会(IOC)がNGOでNPOであるか?〜

前号のスポーツ思考は第53回世界体操選手権(10月19日インドネシア開幕)に参加するはずだったイスラエル選手団へのビザ発給をインドネシア政府が拒んだことについて出会った。

スポーツ思考ではIOCの声明を詳述したが、IOCの求めたのは、インドネシアがスポーツ選手を差別しないことの保証であり、政治も宗教もあらゆる差別をスポーツが乗り越えるものであることの宣言であった。が、それを具現化するには選手参加資格に選手の「反戦意思表明」を求める以外にないというのがスポーツ思考の究極的提言であった。

スポーツ思考を愛読いただいている友人から
「敗戦によって世界のスポーツ界からパージされていた日本にまずアジア大会開催への示唆を与え、それから東京五輪1964にまで導いたインドのような役割を専門にする調節機関がIOCには必要になってきていると思いますが、何かありますか?この機関は当然、ロシアやイスラエルの戦争責任に対しても、もっとハッキリ物申す世界に向けての国連的な政治的発信の機能を備えるべきです」
との意見をいただいた。

敗戦後の日本スポーツ界が国際舞台に復帰できたのは戦争でバラバラになったアジアをスポーツで修復しようというインドのニューデリーで開催されたアジア競技大会に日本を招いてくれたことがきっかけであることは、当スポーツ思考でも再三取り上げてきた。

日本を招いてくれるまでの総意調整にインドのスポーツ関係者が尽くした貢献は日本スポーツ界が永久に忘れてはならないことである。

日本のアジア大会参加から1958年第3回アジア競技大会開催を経て、1964年の東京五輪までの道のりは確かにインドの友情が結びついたものであった。

しかし、それが果たせたのは、オリンピック競技大会を主催するIOCのようにアジア競技連盟(AGF)というアジア大会を主催する団体があったからであり、第三機関があったわけではない。AGFにおいてスポーツ関係者が意見をぶつけ合い、話し合い、そして日本の参加が決まったのである。

様々な問題が生ずると第三者委員会が設けられるパターンが社会現象である。日本のスポーツ界におけるパワハラやいじめ、体罰の問題を裁く場合も、第三者委員会が設けられるケースが相次いだ。

しかしスポーツが政治や宗教を超えて人と人とを結びつける道であるとしたら、スポーツ組織そのもののスポーツによる自浄が求められなければならないだろう。

国連がウクライナ戦争もガザ紛争も止められない現実は、国連自身の構造にある。そこは国と国がそれぞれの利権を主張し、調整する場であり、国連大使は国の代表に過ぎないからだ。

対して、IOCはクーベルタンに代表される精神的財産を継承し、その精神に賛同し、その精神に認められた者が集まり、一つの目的を志向する。それがオリンピック競技大会であり、認められた者(IOC委員)はオリンピック大使として、各国に派遣され、オリンピズムを広めるのである。

IOCが国連のような組織になった瞬間にそこは政争の場となり、スポーツがスポーツを裁くことができないことになる。

IOCが非政府機関である理由はこの一点にある。

そして商業主義に陥らないために非営利団体であることを辞めない。オリンピックマーケティングで稼いだ利益は全てスポーツに還元される。

イスラエルやロシアの戦争責任自身に物を申した時点で、それは政治となり、スポーツが消える。故に、IOCはオリンピック停戦を破ったが故にロシアとそれを支援したベラルーシに制裁をしたのである。

イスラエルがハマスの攻撃を受けて、その報復を展開していることは、政治の問題であり、IOCはそれについて発言しない。

しかし、選手たちがそれぞれの政治によってオリンピック運動に参加できないことに対しては物申し、選手がその意志を実現できるようにする。

IOCが頼りなりように見えるから、中立的組織を別に作るというのは問題の解決にはならない。あくまでもスポーツはスポーツのためにスポーツの発言をしていくしかいない。

今回のインドネシアがイスラエル選手にスポーツ大会参加の機会を奪ったことについては、徹底的に糾弾し、スポーツの世界にインドネシアが入りたいのなら、オリンピズムを遵守することをインドネシアの政治に理解させるしかない。

今回のIOCの声明は妥当である。

しかし、その一歩先を進めるために「平和の戦士」である選手の「戦争に反対する意志」を表明させることが必要だと思うのである。実はこれにはかなりの決心が必要である。私がウクライナ戦争が起きた時に、オリンピック憲章にアスリートコード(選手資格宣言)を復活させ、その一文に戦争反対意志を表明させることを提案したが、IOCは慎重に賢察し回答を寄越した。

「今、ロシアの選手にそれを求めることは、彼らを牢に追いやることになる」

しかし、世界がここまで来てしまうと、もはや覚悟を決めなければならないのではないか?というのがスポーツ思考である。

その場合、IOCは身を呈して選手を守る決意を示さなければならない。アスリートを守るスポーツ平和隊が起動できればと思うところである。

トランプとFIFA 2025-10-27 22

一般に知性がIOCに政治性を求めるのは仕方がないが、しかしスポーツはそれほど愚かではない。例えば、トランプ大統領が来年の国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップを支配しようとしているが、恐らく日本の知性あるいはメディアはFIFAがトランプにやられると見ているだろう。

トランプは大統領執務室で大会開幕のわずか 8 か月前に、2026年ワールドカップのスタジアムマップを覆すという脅しをほのめかした。このメディアへの発言は、彼が民主党との政治的な争いにおいて、ワールドカップ、さらには2028年のロサンゼルスオリンピックさえも、躊躇なく利用することを裏付けている。

しかし、ビクター・モンタリアーニFIFA副会長3週間前のロンドンでの会議でこう述べた。

「これはFIFAの大会であり、FIFAがこれらの決定を下す。現世界の指導者たちへの敬意を払いつつ言うが、サッカーは彼らよりも大きく、サッカーは彼らの政権、政府、スローガンよりも長く生き残るだろう。それが我々のスポーツの美しさだ。いかなる個人よりも、いかなる国よりも偉大なのだ」

米国大統領を含め、いかなる人物にもスポーツを利用して政治的な報復をさせることは絶対にありえない。

それがスポーツの原理であり、これを貫くからこそ世界平和への道に希望が見出せるのだ。

(敬称略)

2025年10月27日

明日香 羊
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編集好奇
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スポーツを過小評価する人々に言いたい。人間は体を持っているのだと。子どもは自然として生まれる。自然から学ぶべきだ。大人の見地から意識を育てられて意識でしか考えられなくなる。それは不幸なことである。
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橋本聖子が新会長 JOCにいま何が?(日刊ゲンダイ) 春日にしか書けない深層
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https://note.com/olympism/m/m58da6016e53d

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IOC会長選 7候補マニフェスト完全採点
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