「墨子を学ぶ」その1 公輸 〜戦争を止める方法〜
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「墨子を学ぶ」その1 公輸
〜戦争を止める方法〜
「墨子を学ぶ」シリーズ第一弾は私の最も好きな話である。実践の人、墨子の足跡や功績を記す資料は儒者などの論敵によって抹殺されている中で、唯一残る物語である。
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春秋戦国の時代、公輸盤という大工の神様、技術者の元祖がいた。彼は楚国のために雲梯という最新兵器を作った。城壁を兵士が大挙して登り、敵地に乗り込む武器。これを使って宋国を攻めるためだ。
その情報が斉国にいた墨子に入る。彼は遠路を駆け楚国の都に入り、公輸盤に面会を求めた。
墨子「北方である男が私を侮辱しました。貴殿の力を借りその者を殺したい。謝礼を出す」
公輸盤「人を殺すようなことは、義としてできない」
墨子「あなたが雲梯を作り、宋を攻めるという噂を聞きました。今、楚国に余っているのは土地であって、足りないものは人民です。その足りないものを殺して、余っているものを奪うのは、智とは言えません。罪もないのに宋の国を攻めるのは、仁とは言えません。この道理をわきまえながら、王を諌めないのは忠とは言えません。貴殿は先に殺人は義としてできないと言われたのに、たくさんの人を殺そうとする。類推の論理を知らないのでしょうか?」
公輸盤「言われる通りだ」
墨子「ならば中止を」
公輸盤「王に説いてしまった」
墨子「では私を王に会わせてください」
公輸盤「わかりました」
こうして墨子は王に面会が叶った。
そして王にも類推の論理を展開する。
墨子「立派な車を持ちながら、隣家のボロ車を盗もうとし、豪華な衣装を持ちながら、隣家の着物を盗もうとする男がいます。穀物や肉があるのに、隣家の糠や粕を盗もうとする男です。どう思われますか」
王「盗癖があるのだろう」
墨子「お国の領土は五千里四方もあるのに、宋国の領土は五百里四方しかありません。お国にはサイや鹿が満ち、魚も貝類も取れ、天下一の豊かさなのに、宋では雉、兎、鮒などのすら入りません・・・宋を攻めるのはちょうど、盗癖の男と同じではないでしょうか?王の義に傷がつくだけです」
王「最もな説だが、公輸盤の立場がある」
すると墨子は帯を解き、それを城郭に見立てて、木札を手にして、これを兵器になぞらえて、公輸盤と模擬戦争を展開する。
公輸盤は機を見ては攻撃に出たが、墨子はその都度防いだ。公輸盤の木札が尽きた時、墨子には防御用の木札が残っていた。
公輸盤が負けを認めた。しかしどうすれば勝てるかを知っていると言った。
墨子も知っていると言った。
楚王「どういうことだ」
墨子「公輸盤は私を殺せばいいと思っているのです」
墨子は続けた。「私の三百人の弟子たちが私の考案した防御の兵器を携えて、宋の城で待っています。私を殺しても、宋を滅ぼすことはできません」
楚王「私の負けだ。宋を攻めるのは止める」
こうして墨子は宋を救った。
帰路、墨子が宋を通り過ぎるとき、大雨が降った。村里で雨乞いをしようとしたが、村人は墨子を追い立てた。
誠に「神に治むる者は、衆人その功を知らず、明に争う者は、衆人これを知る」
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米国がイランを攻めようとする時、トランプの懐に飛び込み、イランの民たちを救うために彼と模擬戦争をすることができたならば・・・
墨子は公輸盤に並ぶ最先端技術者であった。
日本の評論家たちは米国地上部隊の可能性について言及しているが、現実的な論評になっていない。7000人の部隊が戦闘地域にいるという話もあるが、そのほとんどは戦闘部隊と言えない。7000人の戦闘部隊のうち5000人はイランの海岸に近づけない巨大な船に乗っているのだ。どうやってこれらの部隊と2000人の空挺部隊、そして第82空挺師団を100万人の軍隊に降下させるというのだろうか?
イランは短距離と長距離の両方の弾道ミサイルを大量に保有している。巡航ミサイルも大量に保有しており、ドローンはさらに大量に保有している。イスラエルが防衛ミサイルの在庫不足に陥っていることと対照的である。このまま戦争を続けるのはどちらに有利か?
自らの負けを認めないトランプの成功戦略(彼はこれを不動産業の先輩に教わったのだ)は衆人には強さと映るかもしれない。が、その実態は敗戦である。そのことは「神に治むる者」だけが知ることになるだろう。
(敬称略)
2026年4月11日
明日香 羊
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編集好奇
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宋を救った墨子が雨宿りもさせてもらえない。私はこのくだりがなぜか気に入っていて、そのことをかつて中国人の古き良き友に話したことがあった。
彼は一言ぼそっと言った。「ロマンチストだね」
現実は厳しい!
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「新・実践五輪批判」連載完結!
https://www.nikkan-gendai.com/?p=news&column=5471
ミラノコルティナ冬季五輪を機に地政学的な視点にオリンピズムのプリズムを入れて世界を見るという哲学的挑戦をしております。どうぞご高覧ください。
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次号はvol.553です。
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