スポーツ思考回顧録 Respectablility of Sport Philosophy vol.2

本件は時事に左右されないコラムと思います。

スポーツ思考録 vol.234 2006/5/19

◆ 異次元への共感

 お世話になっているフットマーク株式会社の商品カ
タログに「人は水に入ると笑顔になる」というフレー
ズがある。その言葉を発した社長本人から、「なぜな
んでしょう?」と聞かれ、咄嗟に浮かんだのが「異次
元への共感」だった。
 後で説明を求められ、哲学的反省をすると、次のよ
うになった。
 「水に入った瞬間、人間は日常五感で触れている世
界とは全く違う世界に来たと直感します。しかし、そ
れは否定したい世界、できれば避けて通りたい世界で
はなく、むしろ自分が受け入れられている、肯定され
ていると感じる世界です。違和感が共感に瞬時に変わ
る。本当はむしろこちらの世界の方が、本来の世界な
のではないかと感じる世界。それが水の世界なのでは
ないでしょうか?私たちは水に入った瞬間、笑顔で、
そのことを表現するのです。まさに『異次元への共感』
ではないでしょうか?!」
 「笑いの哲学」でベルグソンは、笑いを緊張からの
解放と定義した。水中という非日常な世界に入る直前
に緊張した意識は、入った瞬間に解放される。そこに
笑みがこぼれる。それは、あたかも異次元こそ本来の
私の居場所だといっているかのようだ。
 水はディープに問い続ける。
                       羊


【あとがき】
でも、私は水中でなかなか笑顔になっていない。真剣
に泳いでいる。水中運動を義務的にこなしているから
だ。猛省であります。


(敬称略)