vol.294 サマランチの復活 ~新会長トマス・バッハの決心~
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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.294
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Sport Philosophy
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サマランチの復活
~新会長トマス・バッハの決心~
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ブエノスアイレスのIOC総会の重大決定事項のひとつIOC新
会長の選挙。2020年五輪開催地決定とのバランスを取ることを
IOCは選ぶ。1991年IOC委員就任以来、積極的にIOCの
要職を買って出てきたトマス・バッハ(以下、バッハ)は着実に実力
を付け、IOCになくてはならない存在となった。その彼を選ぶ総会
で同じ大陸から五輪開催地を選ぶことはない。
以上が、東京開催決定を予想した際の私のスポーツ思考である。
(vol.293前号にて詳述)
予想通り、有力候補と言われたマドリッドは最初に落選し、東京は
60票を獲得した。この勝利に最終プレゼンテーションと最終ロビー
活動が絶対的な効果を発揮したとは衆目の一致するところだろうが、
事実は、スポーツ政治力学の招いた結果に過ぎないのである。勝利の
美酒に酔っている関係者に冷水を「プレゼント」させていただく。
この浮かれ騒ぎで2020年の東京五輪が担うべき本当の使命を誤
らないために、来年2月の東京五輪組織委員会設立に動く今こそクー
ルになるべき時だ。
バッハは法律家であり、実業家であり、そしてドイツNOC会長で
ある。ドイツNOC会長と簡単に言うが、それはかつての東独と西独
を統一した後のドイツNOC会長であるということだ。ベルリンの壁
が崩壊し、統一ドイツが誕生した時、スポーツ界の統合も一挙に進ん
だ。それまで東独スポーツが有していたスポーツ科学の知と財産は、
すべてドイツの財産となった。そこにはライプチヒ大学が長年の研究
で築き上げた「勝利するための知・財・人」も入っていた。
その頂点に立つドイツNOC会長がトマス・バッハであった。
ドイツと言えばスポーツポリティックスのメッカと言ってもいい。
オリンピックを窮地から救ったオリンピックマーケティングを発案し
たのはアディダスのホルスト・ダスラーであり、それ以前から国際ス
ポーツシンジケートを構築してきた。バッハはアディダスで働いてい
た時にそれを学んだ。
サマランチ体制が独裁との批判を受けながらも長期に亘った後、
それを引き継いだロゲ会長は、いわば合議制のIOCを作り、正常化
を世間にアピールできた。そして、実力と人気を兼ね備えたバッハが
満を持して登場した。
バッハはまもなくドイツNOC会長を辞任し、ゴルファアラブドイ
ツ商工会議所の会頭も辞し、IOC会長に専念する意志を固めている。
「この偉大な全世界的なオーケストラであるIOCは明るい未来のた
めに仲良く手を取り合って進んで行く」とはバッハの開陳。
会長就任時インタビューで、「IOCという偉大なオーケストラの
私はただの指揮者にすぎない」と言ったそうだ。この言葉を聞いて、
私にピンとくるものがあった。これはサマランチ会長の復活であると。
なぜなら、この言葉は2002年のソルトレークシティ五輪招致疑
惑の中で、サマランチ独裁体制の批判を受け、サマランチが語った言
葉そのものだったからだ。「私はオーケストラの指揮者に過ぎない」
バッハはその疑惑騒動収拾のため、IOC再構築に奮闘し、サマラン
チに認められた。
荘厳なハーモニーを奏でるIOCを造るためにバッハはサマランチ
の化身となる。そういう決心を私は見る。東京五輪はそのための一手
に選ばれたのに過ぎない。東京が良かったのではなく、バッハが強か
ったのだ。浮かれすぎは禁物である。
(敬称略)
2013年9月21日
明日香 羊
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編集好奇
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トマスと言った方がしっくりくるのですが、やはり文語はバッハで。
妻がIOC事務局に研修にいく際にドイツでお世話になった時は既に
IOC委員でしたが、IOC本部でも親切にしてもらったそうです。
スポーツ界では「お・も・て・な・し」はとても大切ですね。
氏の志には実は私と同じものがあります。それはサマランチも持って
いたものです。
それについては、次号以降に思考します。
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考?ご期待
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次号はvol.295です。
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