ユースオリンピックの意味 〜小平奈緒と李相花の抱擁〜

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ユースオリンピックの意味
〜小平奈緒と李相花の抱擁〜

2018年平昌五輪、スピードスケート女子500メートル。小平奈緒はライバルの李相花(イ・サンファ)に勝利した。しかし、勝利以上の何かをその戦いは表現した。当時をスポーツ思考の記述で振り返る。私はこの場面を江陵駅のロビーのモニターで見たのだった。
スポーツ思考vol.403

小平奈緒が李相花とのスピードスケートを通じた友情を示し、韓国の人々の心も動かした瞬間があった。
私はそれを平昌五輪の現場で体験した。
小平が五輪新記録でフィニッシュしたスピードスケート500メートル。
その後に滑る李相花には五輪三連覇の期待がかかる。
韓国の人々はその滑りに集中した。
小平の激走に興奮冷めやらぬ聴衆(日本からの応援団)に奈緒は唇に指を立てて「静かに」のポーズ。
李のスタートに敬意を示した。
(李の)全力疾走もわずかに及ばず場内はシーンとした。
その李に小平が走り寄って、健闘を称えた。
そのシーンに私の周りにいた200名ほどの韓国の人々が拍手喝采をした。
涙がとまらなかった。

江陵駅で列車を待つ人々がモニターに映し出された江陵スピードスケート場の熱戦を見ていた。その時のシーンである。小平が五輪新記録でゴールした瞬間、小平の成功に(私は)喜びを示したかった、(しかし)周りはほとんどが韓国の人である。控えた。
しかし、李選手と小平選手の(抱擁)シーンには、遠慮なく拍手を送った。

(以上、スポーツ思考vol.403より)

彼女らの国の境を超えた友情は日韓のみならず世界の共感を呼んだ。後に2018平昌記念財団が二人に「韓日友情賞」を贈っている。

そしてこの1月22日、小平が自身の公式インスタグラムで李相花と再会したとツーショット写真とともに投稿した。それが話題となっている。「熱い友情を分かち合った」平昌五輪屈指の名シーンが再現!とメディアは取り上げているが、小平がなぜそこにいたのかはあまり注目されていないようだ。

小平奈緒と李相花 2024-01-29 12

彼女は現在、韓国・江原で開催されているユースオリンピックのARMの任にあるのだ。ARMとはアスリートロールモデルのことで、国際オリンピック委員会(IOC)が2010年にユースオリンピックを立ち上げて以来、重要としているプログラムである。

なぜならユースオリンピックこそ、今や失われようとしているオリンピック精神を若人に受け継ぐためのイベントであるからだ。長き歳月の中でオリンピックは商業主義や勝利至上主義に傾き、本来のあり方を忘却しそうになる。その危惧を拭う手立てとしてユースオリンピックが生まれた。ユースオリンピックでは、オリンピックチャンピオン、オリンピックメダリストなどオリンピック出場経験選手が選ばれて、次世代のオリンピアンであるユースオリンピック出場選手たちを支援する。

ARM はまさにアスリートのあるべき姿を示す存在である。競技場にて若いアスリートに声をかけるだけでなく、教育活動やワークショップを企画し、キャリア管理、怪我の予防、オリンピックにおける連帯など、成長に役立つスキルやトピックについて話し合う。

江原2024ユースオリンピック冬季大会では、27名のオリンピアンがARMに抜擢されているが、その中の一人が小平奈緒である。その意味で小平がスピードスケート会場(江陵オーバル)でオリンピックや世界選手権などで、長年しのぎを削った唯一無二の親友と再会し抱擁したのだ。これについてあるメディアが偶然と表現したが、むしろ必然というべきであった。

彼らがオリンピック精神を具現化する存在である限り、その存在が若きアスリートにとって非常に貴重な体験をもたらすからである。

小平と李の再会のニュースを伝えるのであれば、ARMとユースオリンピックの意義を同時に伝えてほしいところだ。小平の今背負っている使命については一言もないことが、ユース五輪に関心の薄い日本のメディア状況を如実に示している。話題になるのは五輪同様に日本が何色のメダルを取ったかだけである。

日本の五輪運動の担い手、日本オリンピック委員会(JOC)に期待するしかない。だが、そのホームページでも江原ユースオリンピックのニュースは日本選手の成績だけである。江原道の冬は零下7度だが若い熱気に溢れている。東京の冬にオリンピックの響きは聞こえてこない。摂氏7度だが底冷えがする。

(敬称略)

2024年1月29日

明日香 羊
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編集好奇
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平昌での2018年冬季五輪から6年後に江原でのユース五輪冬季が実現されている。韓国にはオリンピックの火が消えていない。果たして日本では。札幌はユースオリンピックからチャレンジしたらどうだろう。経済よりも心を求めて。

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コメント

  • 同感

    日本のマスコミ報道には、文脈と哲学がない。
    未来への読みと持続する精神がない。
    すなわち、オリンピズム云々の前に文化がない。

    オリンピックにユースオリンピックがあるというのは、
    オリンピックの知恵というか、本能ですね。
    オリンピック自体も生命体であり、老いていくということを自覚している。
    だから未来を“今”から始めている。

    日本がいまだに学び得ていないものはあまりに多いですね。



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