なぜ長沼ボート場は五輪会場になれなかったか? ~小池マジックとオリンピズム~
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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.361
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なぜ長沼ボート場は五輪会場になれなかったか?
~小池マジックとオリンピズム~
都政改革本部の五輪見直し論は、空論に終わった。もともと五輪
の構造と論理から言えば、ありえない会場変更を都民ファースト
を錦の御旗に組織委員会を仮想敵国に想定した展開は、メディア
の興味と世間の関心を煽ることに成功した。
しかしこれはあくまでもドメスティックな問題であり、IOCが
登場すれば、すべては原則に戻るしかないとスポーツ思考は訴え
てきた。なぜなら五輪憲章に背くことだけはIOCが死守すると
ころであるからだ。
この場合、都知事の政策に選手第一主義が危機にさらされること
になるのだから、これにIOC会長がイエスというはずはない。
都政から言えば、都が巨額の支出をするのだから、都がキャステ
ィングボードを握っているという常識に信念を持つのは理解する
が、それだからと言って、オリンピックがオリンピックでなくな
ることはIOCが死守するべきポイントにならざるをえないので
ある。
小池都知事は知的に「コンセッション方式で、ワイドスプレンデ
ィングであり、サスティナブルな」有明アリーナのあり方を考え
るのだろうが、実は、もともと、有明アリーナの構想にはその地
域を総合的にイノベーションするというコンセプトが入っていた。
実は、夢の島にバスケットボールの会場を作る計画があった。そ
れには、余り語られていない深い意味があった。二万人を収容す
る室内球技場が必要なわけが。それはバスケットボール会場を、
五輪後も永続的に支え続ける秘策であったのだ。Bリーグができて
これからバスケットボールの興隆が期待されるものの、それのみ
では会場の維持経費を賄うことができないかもしれない。そこに
冬季スポーツ会場としての有効利用のアイデアが持ち上がった。
世界的にはとても人気のあるアイスホッケーの世界選手権を開催
できる会場が日本にはないのだ。アイスホッケーは世界規模であ
ると二万人を集客する。日本でアイスホッケーの世界選手権を開
催することが実現するためには、二万人を収容できる屋内競技場
が必要なのだ。
ところがその構想は舛添都知事が経費見直しでバスケットボール
会場を埼玉アリーナにもっていくことで潰れてしまったのだ。そ
の時、その代替として、有明アリーナが人質となった。夢の島が
夢のまた夢となったところで、スポーツ界の思いは有明アリーナ
での実現に刷り込まれた。ところが、そこに小池都政改革が出現
して、最後の最後に有明アリーナをなくし、横浜アリーナにもっ
ていくという案を出してきた。こうなると舛添知事に妥協した条
件が崩れることになり発案者側が黙っていない。
日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎が日本トップリーグ連携機
構の会長としてテレビにも登場し、顔を真っ赤にして横浜アリー
ナへの変更反対を表明したのには、スポーツ界の熱い思いが背景
にあったのである。
小池都知事は11月29日の四者巨頭会談で最後の最後まで、会場変
更に拘り、バレーボール会場移設の結論を12月16日まで延長した。
この延期により会場経費減額が期待されたかと思いきや、結果は
会場変更なしで、前回以上の減額もなし、有明アリーナを中心に
有明地域のリノベーションという「新たな」構想だということだ。
ことほど左様に、実は小池改革が行ったことは、もともと組織委
員会が自らの試行錯誤で行わなければならなかったことを改めて
再現したのである。それによって、これまで組織委員会が行って
きた準備運営を本筋に戻したともいえるかもしれない。
結果的には、都知事の会場変更案はすべて却下され、元のとおり
になった。しかし、その発議のよって、400億円の予算削減が果た
され、かつ東京ベイゾーンの新たな恒久的なレガシーの創出とい
うプランが浮上した。しかし、これも元々、組織員会が考えてい
た構想だあったはずだ。
これまで組織委員会が準備運営してきたと思っていたことに大上
段からメスを入れ、東京五輪会場見直しに着手した小池都知事は
リボンの騎士よろしく悪者を退治するヒロイン。この姿に多くの
民は声援を送った。
長沼ボート場へに会場変更が実現すると本気で思っていた人々は
多かったはずだ。しかし、それができなかった理由は以上のとお
りである。小池マジックに踊らされた三カ月であった。
しかし、そのマジックにオリンピズムが刺激を与えた。それが、
バッハIOC会長の来日であり、四者協議の開催であり、デビュ
五輪統括局長の参入であった。
それによって、小池マジックは異次元の魔法に昇華されたように
思う。組織委員会の本来のあり方を指し示すことができたからだ。
オリンピズムとは権威ではなく、実践であるということを示した
からだ。
森組織委員会会長のオリンピックについての構造認識は良しとし
よう。しかし、「組織委員会は都がお決めになることを実行する
だけ」と言ったことによって、組織委員会を動かすのが主催都市
であることを認めた。森会長の組織委員会は権威であって、実践
ではないということだ。
であるならば、組織委員会に都知事の思考と実践を誘致すること
で、本来、五輪憲章が求める組織委員会が出現することができる
であろう。
小池都知事の五輪参戦にはそういう意味があったのである。
(敬称略)
2016年12月31日
明日香 羊
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編集好奇
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2016年最後のスポーツ思考となりました。
小池マジックに翻弄されたように見える東京五輪ですが、
実に五輪は政治との切磋琢磨で育ってきたのです。
そこに「スポーツで平和」の秘密がある。
私はそう思っています。
皆さまのスポーツ思考を期しつつ
春日良一
追伸:
10月のバッハvs小池会談の後を受けて、五輪問題を
論じたコラムがiRONNAに掲載されています。
http://ironna.jp/article/4631
ご高覧いただければ幸いです。
さらに新年一発目は、スポーツ平和論を短期集中連載
する予定です。
三が日もスポーツ思考!
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考?ご期待
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次号はvol.362です。
(1998年からの400号を目指して あと39思考?!)
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