vol.289 スポーツ外交の秘儀 ~外交官を超える~

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  週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.289
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スポーツ外交の秘儀
~外交官を超える~


 7月3日にローザンヌで2020年五輪開催の計画を説明するプレゼン
テーションに参集した立候補都市は、それぞれ駒を用意していた。

 イスタンブールは、ババジャン副首相とクルチ青年スポーツ相の
閣僚2人、マドリッドはフェリペ皇太子、そして東京は麻生副総理。

 フェリペ皇太子の演説には多くのIOC委員が感動の涙を浮かべたと
はスポーツジャーナリストの知人から聞いた。その同人から、麻生
副総理も自信満々で、「招致のロビーイングなどは外交に比べれば
ちゃちいもの」などと言われたとも仄聞した。

 スポーツ外交に携わってきた者として正直カチンと来た。スポー
ツを軽んじるから、スポーツ外交も軽んじるの図式が浮かんだ。

 しかし果たしてそうなのだろうか?私自身は日本オリンピック選
手団の渉外担当として、NOC渉外担当として、あるいは長野五輪招致
渉外参事として、様々な形でスポーツ外交に携わってきた。当然、
外務省、地元大使館、総領事館からの協力を受ける場面もあったが、
しかし、常に日本五輪委員会のプライドをもって外交に当たってきた。

 というのはオリンピックアタッシェという専門用語があるがごと
く、五輪外交は外交官には未知のプロトコールがあり、外交ルート
では得られないインテリジェンスをつかむ特別なラインがあるからだ。

 私自身が関わったひとつの例を挙げよう。
 1992年バルセロナ五輪。皇太子殿下が訪問されるということで、
宮内庁、外務省が動いた。殿下の要望で、選手村を訪問し、日本選
手団を激励する計画が立案された。当然、宮内庁は外務省経由でバ
ルセロナの総領事館に組織委員会との交渉を要請した。

 通常、オリンピック開催時には、組織委員会と選手団派遣母体で
ある国内オリンピック委員会の橋渡しをする役としてオリンピック
アタッシェを国内オリンピック委員会(NOC)は任命しなければなら
ない。JOCは恒例により、現地の総領事館にオリンピックアタッシェ
の人選をお願いしていた。

 皇太子選手村訪問の交渉もこのオリンピックアタッシェに任命さ
れた領事が担当していた。

 選手村に入るには特別なアクセスコードが必要となる。参入数日
前に申請をし、一時的通行許可書を得なければならない。オリンピ
ック領域では皇太子もこの掟に従わざるを得ない。しかも皇太子が
動くとなると随行人、SP,、随行記者団等総勢何百人というのスタッ
フが動く。彼らの参入許可書も必要になる。

 外務省が一年がかりで行っていた交渉も先が見えなかった。オリン
ピック開催が一月前に迫ったある日私は宮内庁に呼ばれた。
「皇太子の選手村訪問は実現できますか?」
 私は即答した「はい」

 事前調査に大会開催3週間前に入った私はそれまで何度かの交渉で
信頼を得ていた組織委員会事務総長代理と一日の交渉で話を付けた。
その後、組織委員会警護責任者と交渉し裏ルートでの安全な皇太子の
選手村アクセスを確保した。

 詳細は省くが皇太子の訪問は組織委員会の全面協力を得て無事に
終了した。

 領事と私の違いは何だっただろうか?それはオリンピックの実際
を知っているかどうか?オリンピックの人脈を作れていたかどうか?
の違いである。その違いを生み出すのは、オリンピック運動に携わっ
ている誇りであり、それを成し遂げる使命感である。

 その違いが一年と一日の差となったのだ。

 スポーツ外交、捨てたものではないでしょう?麻生閣下。
 

(敬称略)

2013年7月18日
                         明日香 羊
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編集好奇
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 外交といえば、日本国憲法草案の駆け引きの物語を思い出します。

 憲法第9条ができた経緯。この第9条こそ、五輪運動のスポーツ平
和構想と結びつくものというのが自論です。

 この点については次号で思考したいと思います。

 スポーツ外交といえば、東西の壁が崩壊した直後の東独での日東独
スポーツ協定交渉、ペレストロイカ直後のモスクワでの日ソスポーツ
協定などなどを思い出します。

 こちらは自ら関わったことなので、おいおいご紹介したいと思いま
す。

 それでは皆様のスポーツ思考を期しつつ。

 ありがとうございました。

   
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  考?ご期待
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 次号はvol.290です。  
                       
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コメント

  • スポーツ外交の先進国について

    春日良一 様

    いつも読ませていただいております。
    スポーツ外交に興味をもつ、兵庫県の大学生です。
    一つぜひ質問したい点があるのですが、スポーツ外交の先進国はどこになるのでしょうか?
    お答えいただけますと幸いです。



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