2014.09.24
カテゴリ：オリンピック
参加することに意義ありの思想 ～アジア大会の意味～
━━━━━━ Weekly Column Sport Philosophy ━━━━━━━
週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.324
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Sport Philosophy
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参加することに意義ありの思想
～アジア大会の意味～
茶の間のテレビをつけるとアジア大会の開会式が上演されてい
た。インチョンの歴史スペクタクルが展開され、そのまま公式セ
レモニーまでアジア大会に心を寄せた。
思えば1986年ソウルアジア大会に日本代表選手団本部員として
参加して以来、28年の歳月が経っている。華麗なショーが終わり、
選手団入場が始まった。インド選手団の入場。1951年第一回アジ
ア競技大会開催国だったインド。日本にとっては恩人である。第
二次世界大戦の敗戦後、国際スポーツの舞台に初めて日本は立つ
ことができたのである。
日本選手団の入場、彼らの心に一滴でもインドへの思いがあっ
たであろうか？日本のスポーツを代表してその遺産を受け継いで
いるという自覚が一かけらでもあっただろうか？
巷では「レガシー」と言う言葉が大手をふるっている。2020年
東京五輪のレガシーと言う。ならばそういう君たちは1964年の東
京五輪が残したものを受け継いでいるのだろうか？遡れば、戦後
の惨状の中から這い上がる日本人に勇気と希望を与えたスポーツ
の魂を受け継いでいるのだろうか？
レガシーと声高にいうのであれば、スポーツで平和という思想
こそ受け継がなければならないはずだ。だらだらと続く日本選手
たちの行進を嘆く。彼らに何も伝えることができない今の日本ス
ポーツ界の惨状を嘆く。
1986年ソウルアジア大会の前大会となる1982年アジア大会はイ
ンドで開催された。時のJOC幹部は日本スポーツ界を国際舞台に
受け入れてくれた原動力となったインドの故ネール首相への敬愛
を忘れなかった。その大会に最も若輩の本部員として参加した私
にもその思いは伝わっていた。故にスポーツ外交は繋がり、その
絆がひとつひとつのネットワークを作っていくのだ。
レガシーというのであれば、少なくとも1951年までは魂を回帰
させてもらいたい。本当の遺志と遺産を引き継いでいないものが、
レガシーというのは誠に空言と言わざるを得ないだろう。
ＯＣＡ会長のアーマドが開会演説を始めた。随分饒舌になった
ものだ。1991年アジアのスポーツ界は混乱した。前年のイラク戦
争でＯＣＡ会長だったシェイク･ファハドが戦死したからだ。新
会長を狙ってアジアの猛者たちが動き出した。元々多民族、多言
語、多宗教のＯＣＡ管轄大陸は常に分裂の危機に瀕していた。
息子のアーマドが立候補した。これに東のスポーツ大国、韓国、
中国、そして日本が黙っていなかった。ＯＣＡ発足以来、アラブ
諸国（西）に権力を持っていかれた東はこの時こそ、改革の場で
あるとして、急遽、韓国、中国を日本に集め、東アジア会議を設
立、宣言を発表しようとする。それに賛同した東南アジアが参与
し、宣言が発表された。「アジアの分裂を避けるべし」と！
ＯＣＡ新会長を決める総会は、折りしもニューデリーで行われ
た。1991年9月だっただろうか？前夜、ニューデリーの公式ホテル
で分裂を避けるべく動いたのは日本だった。荻村伊智朗ＪＯＣ国
際委員長と私は手分けして、立候補者の部屋を回り、分裂回避を
説得した。そのためにアーマドに会長の座を継がせる戦略に出た。
その見返りにＪＯＣのＯＣＡにおける発言権を獲得した。アーマ
ドがＯＣＡ憲章に基づいたアジアの統一と正常化に尽力すること
を約束させた。
若輩だったアーマドがとても立派な演説をしていた。スポーツ
は彼を訓練したのだ。「アジアはあらゆる民族と宗教を調和さ
せる土壌になる」そのスピーチを聞いていた日本人選手の映像が
写った。大あくびをしている選手がいた。まさか彼はＩＯＣ委員
になりたいとは言わないだろう。開会式に参加しているという意
味を理解していないからだ。
レガシーというのならば、ＯＣＡの前身、ＡＧＦからの歴史が
残した魂の記録をきちんと伝えなければならないだろう。
さて、翌日からの新聞各紙を拝見して、気持ちが悪くなった。
日本「金」、日本「銀」、日本「銅」の大見出しが連日踊る。
当たり前？！そうです。アジア大会です。日本にとってアジア大
会も金メダルを取る場所でしかないようだ。アジア大会をアジア
のオリンピックということがある。あえてオリンピックとの違い
を問えば、答えは民族文化の表現できる場でもあるということで
はないか？
ＯＣＡ憲章にあるように、アジア大会は若人の友情を深める場
でもある。ならばまず日本は友好親善の場として、アジア大会で
の歴史と文化を紐解くべきだろう。思えば1982年ニューデリーは
大国中国に日本が金メダル数を抜かれるかどうか？で競技力向上
委員会はやきもきしていた。今日本は、やっとアジア三位の位置
に甘んじている。そして、この金メダル協奏曲。
少しは謙虚に日本のスポーツがアジアで果たすべき貢献につい
て考えたらどうだ。南北統一コリア選手団も実現していない。
アジアから追い出したイスラエルの問題は不問でいいのか？次期
ＯＣＡ会長はアジア全体で育てなければならないはずだ。ＯＣＡ
本部の問題は解決していないだろう。日本は貢献という文字を忘
れていないか？
「オリンピックは参加することに意義がある」という言葉も最
近は若人に伝わっていないようだ。古き良きアマチュアリズムの
表現と一時は捉えられ、税金を使って負けて帰ってくる日本選手
団への批判対象として認識されていたかもしれない。
しかし、この意味は洞察すればこうである。「オリンピックは
その理念がスポーツを通じた世界平和である。その運動に参加す
ることこそ意義のあることだ」オリンピックに参加し、自らの切
磋琢磨の勝利への努力を通じて、スポーツによる世界平和運動に
与する、それが意義あることだという意味である。
それを忘れて「金だ！銀だ!」と騒ぐＪＯＣにもメディアにも
レガシーを語る資格は全くない。アジア大会はアジアの一番を
決める大会ではない。アジアの友情を実現する大会なのだ。
（敬称略）
2014年9月24日
明日香 羊
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編集好奇
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私が参加したインドのアジア大会では毎晩インドの誇る文化芸
術の公演が開催されていました。日本選手団は人っ子一人行きま
せんでした。ラビシャンカールの演奏にすら行きませんでした。
日本選手団のコンパニオンをしてくれたニューデリー大学の才女
は「日本は金メダルを取りにきただけなのか？文化交流に来たの
ではないのか？」と涙を浮かべました。
先日、ある大学の集中講義で講演する機会があり、オリンピッ
クの思想とオリンピアンについて語ったところ、中にロンドン五
輪に参加した選手がいて、「自分がオリンピックに出た意味を初
めて知りました」とリオに闘志を燃やしてくれました。
インドのことについて、ご参照ください。
http://sankei.jp.msn.com/sochi2014/news/140218/soc14021810010031-n1.htm
皆様のスポーツ思考を期待しつつ
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考？ご期待
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次号はvol.３２５です。
（1998年からの400号を目指して あと75思考？！）
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