五輪エンブレムとは何か?~「常識」でオリンピズムは理解できない~

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  Sport Philosophy 

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五輪エンブレムとは何か?
 ~「常識」でオリンピズムは理解できない~


 五輪エンブレム問題が迷走を続けている。東京五輪組織委員会が
決めたエンブレムに国際的に知的所有権問題が提示され、撤回が決
断されてからも、様々なメディア、SNSでこの問題が論じられて
いる。

 昨日たまたまテレビをつけたら、NHKの週刊ニュース「深読み」
とかいいう番組で識者と言われる方々とタレントの方々が五輪エン
ブレムの決め方を論じている場面が映っていた。それぞれが正論を
吐いているのだが、五輪哲学の知見がないため、問題が核心を離れ
ていく様が辛かった。

 ことほどさように全ての論点が行き着かない先にオリンピズムの
神秘があると言えば言えようか。

 「常識が真理ではない!」という真理を垣間見た気がする。

 この問題の基本には、「国民的な」ものを「国民が」みな納得で
きるように決めなければならない!という「常識」がすべての論拠
にある。

 しかし、これはデザインを決めるということをゴールにした場合、
成り立たない議論である。これはオリンピズム云々以前に論理的に
そうである。なぜなら全ての国民が納得できるデザインはこの相対
的な世界にはありえないからである。

 そこで、できるだけ総意を築くためにどうするか?という議論に
いくのであれば、それは、それこそ人類創世記から人間が行ってき
た格闘と議論の歴史を繰り返すことになり、結果、デモクラシー
と多数決がいいんじゃないか?ということになる。一方で論理学に
より民主主義と日本的民主主義的な何かは全く違っていて、日本的
には「『みんな』がなんとなく納得できればいいんじゃないの」が
本音となり、結果、透明性とか皆が選択に関与できる場を求める方
向に話が進んでしまう。

 オリンピズムから言えば話は全く逆の展開になる。なぜなら、こ
のエンブレムの唯一の創造主はIOC(国際オリンピック委員会)
であるからだ。オリンピックの聖典、オリンピック憲章に基づいて
話を進めるとこうなる。

 オリンピックは五輪と訳されているが、この五輪という名訳?!
はオリンピックのシンボル、五輪にかけられている。五大陸が手を
つなぎあって世界平和を象徴する五つの輪である。これがオリンピ
ックの正真正銘唯一の五輪のエンブレム(狭義)である。

 IOCは五輪運動を普及するポイントとして、各国地域を統括す
る国内オリンピック委員会(NOC)を承認するが、そのNOCが
五輪運動の普及のためにそのNOCのエンブレム(広義)を作るこ
とを許可した。日本の場合、日の丸の下に五輪があるのが、JOC
第一エンブレムである。(第二エンブレムについては後日解説)

 この広義のエンブレムの規定は、オリンピックシンボルである五
輪がついていること、そしてそのNOCを表すデザインとともにあ
ることである。つまりエンブレムの公式は、エンブレム=その保有
者の特徴を現す意匠+五輪となる。

 IOCがエンブレム制作を許したもうひとつの権威?!が五輪組
織委員会である。

 五輪大会を世界各都市で開催するという理念の下に展開される五
輪はその大会ごとに組織委員会をその国と地域を統括するNOCが
指導して開催都市とともに創設する。その大会組織委員会が大会エ
ンブレムを作ることをIOCは許しているのである。

 大会組織委員会(OCOG)は付託された権限に基づいて、大会
エンブレムを作成する。その方法はすべて組織委員会が決める。問
題は組織委員会が決めて、IOCが承認したエンブレムをどういう
風に広報しオリンピック運動を推進するかである。エンブレムが認
知されればされるほど五輪が何のために開催されるのか?なぜ、五
輪がスポーツで世界平和を唱えるのか?なぜ、アスリートはより速
く、より強く、より高くを求めるのか?それらがその都市、その国、
そして世界の人々に伝わっていくという仕組みである。

 だからエンブレムを選定することよりも選定されたエンブレムを
いかに普及するかが問われる。そこで、長野五輪では、OCOGの
専門員会が著名な世界的デザイン広報会社を数社選び、その展開案
の優劣でエンブレム案を作る会社を選び、そこに作らせたエンブレ
ムを展開するという方法をとった。

 考えてみてほしい。もし、日本人全員が良しとするエンブレムが
あったとしよう。それでもそのエンブレムが世界中の人に受け入れ
られるか分からない。「でもそれは日本で開催されるオリンピック
だから」と反論があったとしよう。「でもオリンピック開催は日本
でなく東京ですよ」「じゃあ、都民が全員納得すれば」「でも、そ
うしたら、オールジャパンな五輪ではなくなるし」となっていく。

 万人が認めるエンブレムは、OCOGのオリンピックに対する愛
と知が生み出すのであり、民主主義が生み出すものではない。

 そこで今回の問題の焦点が見えてくる。この混乱は、まさにOC
OGの五輪についての知識のなさなのである。五輪は自らの常識よ
り下と思っているから、エンブレム選考にしてもナショナルスタジ
アム建設にしても、今まで都政として国政としてやってきたように
やれる範囲で治まると考えているから、そのとおりにやり、これま
でのオリンピックの歴史も知見にも聞く耳を持たなかったからこう
なってしまった。

 そしてエンブレムも国立競技場もまた同じ都政や国政の常識で展
開しようとしているのである。その結果がどのレベルに行き着くか
日を見るよりも明らかだ。

 今必要なのは五輪憲章勉強会だ。少なくともそこからオリンピッ
クを開催できる力を付けなければならない。まだその程度のところ
にいる組織だと謙虚に受け止めるべきだ。そこからしかすべては始
まらない。虎ノ門ヒルズにいるからといって、頂点にたっているわ
けではない。

 五輪憲章音痴といえば、7月22日の日本記者クラブでの森会長
発言を想起する。

 記者 -- 安倍首相が五輪の開催時も政権を運営している可能性は

 森 「これはなかなか大変な問題だが、個人的な感情をいえば、
2020年の五輪の開幕宣言も安倍首相にやってもらいたいなとい
う気持ちはある」

 五輪憲章では、五輪開会宣言は国家元首によるとして、それも五
輪儀典による限られた言葉だけである。そして、開催期間中に政府
代表のいかなる演説も厳しく禁じている。

 これまで日本国政府は、国家元首を天皇としていたのはではなか
ったか?

 テレビに戻ると「東京五輪のコンセプトがないからエンブレムも
作りようがない」などとの発言。「五輪自体がもともとコンセプト
だからコンセプトはつくりようがいない」と言ったら、皆びっくり
するだろう。

 しかしそれならば「五輪運動というのは何ですか?」という質問
に漢字6文字で答えることができる人はいるだろうか?もしあなた
が正解を出せたら、五輪にコンセプトがいらない理由は既に出てい
る。これまでの五輪のコンセプトやスローガンがあったとして、そ
れを覚えている人がどれだけいるだろう。

 肝心なのは五輪の哲学が如何に反映された五輪であるか?その思
想を象徴したエンブレムであるかなのだ。
                         (敬称略)

2015年9月12日  

                       明日香 羊        
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編集好奇
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 このままでは日本の五輪運動が果てる。という憂国から、鼎談を
開催し、女性自身に掲載されました。東京五輪の一連の問題を女性
誌が掘り下げたことで反響を呼びました。

http://lite-ra.com/2015/09/post-1466.html

 鼎談開催同日、あるTV局から五輪エンブレムについての解説を
依頼されましたが、中国軍事パレードでなくなりました。まだまだ
スポーツは軍事に適わないようです。

 「オリンピック運動の伝道師」と名乗れとは先輩諸氏からの薦め
ですが、軍事に勝つためにはまさに命がけにならねば!と思う次第。

 そういう段階にオリンピックも世界も来ているのです。

 皆様のスポーツ思考を期待します。
                         春日良一

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