南北統一コリアチームは政治宣伝か? ~オリンピックは政治を超える~

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南北統一コリアチームは政治宣伝か?
~オリンピックは政治を超える~

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、2月15日、韓国と北朝鮮
の国内オリンピック委員会(NOC)と政府代表をローザンヌのIOC本部に
招き、東京五輪への南北統一コリアームについて話し合いを持った。

結果、バスケットボール女子、ホッケー女子、柔道、ボートの4競技の合同
チームが東京五輪出場を目指すことなった。

このことをオリンピズムは歓迎する。なぜならば、政治が分断している民族
をスポーツが一つにするという最も重要なゴールを追求する一歩となるか
らである。

IOCバッハ会長のこの動きについて強烈な批判を展開しているのは産経
新聞であるが、その論理を突き詰めていくと、そこに見えるのは、オリンピ
ズムの平和構築の極意である。

この件について、2019年2月17日の産経新聞社説「主張」に掲載された
「政治宣伝に手を貸すのか」という論文を紐解いて見たい。

まずこの論説は「純粋なスポーツのシーンとして歓迎することなど到底で
きない」で始まるが、この一言に全てが還元されている。スポーツは純粋
でなければならない。純粋なスポーツ以外を認めないというその視座その
ものがスポーツを下に見ている。その発想が全文を貫いている。スポーツ
がスポーツの中で納まっている限りにおいて我々はスポーツを認めてあげ
る。しかし、そこを逸脱して、社会的常識を覆そうとしたり、世間に意見をし
たり、はたまた政治に口を出すなんてとんでもないことだ!スポーツはスポ
ーツの鞘に収まっていればいいのだ。

しかし、この発想自身がいつまでたっても平和な世界を実現できない障害
になっている。そこを突き詰めればナショナリズムをどう超えるかの問題に
なるのだ。そのことをオリンピズムはスポーツを利用して実現しようとしている。

論説曰く「・・・北朝鮮は、国連の制裁下にありながら非核化の約束をいま
だ履行していない。・・・罪のない同胞を拉致し、帰そうとしない犯罪国家
だ。・・・これらの問題に解決の兆しすら見えない中での友好ムードの醸成
は、・・・金正恩体制を利するだけだ」となる。この主張そのものが「正論」と
言いたいのだろうが、現実を見れば、非核化について金体制が履行しない
言い分、拉致問題に応じない言い分は捨象されている。私はどちらが正し
いとか言っているわけではない。

政治には対立が必然であるから、ひとつの事象に対してそれぞれがそれぞ
れの立場で論理を持っている。その根拠は自己であり自己の属するもので
ありそれが論争となり、戦争となる。それが食い違う政治の争いを回避して、
一人一人の人間として、人が向き合わない限り和は生まれない。逆に平和
を欲するのであるなら、そこを突き詰めるしかない。

「・・・平昌五輪やジャカルタ・アジア大会などでも認められた合同チームが
何を残したか、IOCは考えてほしい。合同行進では南北が『独島』と呼ぶ
竹島入りの統一旗を掲げようとするなど、結局、政治宣伝の道具として、
スポーツを弄んだだけではないか」と論説は宣うが、IOCもオリンピック評議
会(OCA)も五輪精神に基づき、独島入りの統一旗は認めていない。そして、
合同チームはスポーツによって政治的国境を超えた。

論説曰く「北朝鮮にとっては、スポーツの中でとりわけ世界的なイベントで
ある五輪が最も利用しやすのだろう。スポーツが低く見られているのは明ら
かだ」

スポーツを低く見ているのは論説であり、北朝鮮は五輪が「政治ができない
ことを実現できる唯一無二の場」であることを認識しているのである。故に、
彼らは統一コリアの理念に応じている。

「・・・IOCのバッハ会長も五輪の政治利用に加担していることを自覚すべき
だ」と論説は宣うが、これは五輪が政治を利用して世界平和構築への一歩
を築こうとしている歴史的な運動なのである。スポーツを政治よりも低くみて
いる論説には思いもつかぬことだろうが、今時代はスポーツが政治に利用
されてきた段階から、スポーツが政治を利用する段階に入ったのである。

「32年五輪の『共催』も絵空事というほかはない」と論説は北朝鮮の反ドー
ピング機関が世界機構WADAから不適格組織の認定を受けたことを理由に
しているが、それは現時点でのことであり、これからIOCの指導と支援により、
北朝鮮に国際基準のアンチドーピング機関ができることが重要である。

2032年にオリンピックが南北コリア共同開催を実現することは、世界に希望
を与える灯になるのではないか?東西ドイツ分断の象徴であった「ベルリンの
壁」を超えるように。

1936年ベルリンで開催された第11回オリンピック競技大会は、ヒトラーがナ
チズムを世界に広げるために利用した大会と言われることが多々あるが、し
かし、その実際を探ってみれば、オリンピックに精通していたスポーツ教育
者のカール・ディームが大会運営準備に献身的に携わり、現在に繋がるオ
リンピックの原型を作ったのだ。聖火の採火式とリレーもこの時生まれた。開
会式のあり方もベルリン五輪が原型である。そこには平和の象徴が散りばめ
られている。しかし、五輪憲章に基づき、ヒトラーの開会宣言は、「開会を宣
言」するだけで、一切の政治的スピーチは許さなかった。

この時、オリンピズムはナチズムを利用して、さらなる飛躍を遂げたと私は
見ている。すなわち既にこの時、スポーツは政治を利用して、世界平和構築
の模索を始めたのである。まだまだその力は弱いものだったかもしれないが、
もし人類が平和を求めるとするならば、その仄かな灯を絶やすことなく繋げ
ていくことに望みがあったのだ。

論説は「現実を踏まえぬ共催は、スポーツに名を借りた政治ショーでしかな
い」というが、政治には絶対できない和平をスポーツが実現することで、現
実が変わるのである。

「IOCは頭を冷やして国際情勢を眺めてはどうか」とは論説の結句だが、
IOCのインテリジェンスは全世界を網羅している。IOC会長のホットラインは、
世界のトップと繋がっている。この事実を知った上で、IOC批判をしてもらい
たいものだ。頭を冷やして世界情勢を見つめるべきは、ナショナリズム以外
の論法を知らず、オリンピズムの真実に無知な産経新聞である。

(敬称略)

2019年2月18日

明日香 羊
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編集好奇
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ベルリンの壁崩壊間際に東独を訪問し、日東独スポーツ交流協定の調印に
臨んだ。壁が壊れれば、必要なくなる協定であった。スポーツはあらゆる壁を
超えて人と人を結びつける。というのが、オリンピズムの基本にある。

スポーツが政治を超えようとする動きに批判的な産経新聞は、メキシコとの
国境に壁を作ろうとするトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦する我が国
の首相を批判することがない。産経新聞出身の方が仕切る東京五輪が、
バッハのオリンピズムを受け入れることができるかどうか?大いに注目である。

春日良一

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考?ご期待
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次号はvol.397です。
(1998年からの400号にあと4思考?!)
スポーツ思考
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NHK大河「韋駄天」が扱う五輪運動について
カントの純粋理性批判ならず「純粋五輪批判」を執筆する予定です。
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