オリンピックマーケティングのこれから 〜介護に学ぶ東京2020が示したTOPの限界〜

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オリンピックマーケティングのこれから
〜介護に学ぶ東京2020が示したTOPの限界〜

どうしてもコロナ下で五輪を開かなければならない理由として、
多くのメディアと評論家などが直ぐに掲げるのがNBCの放映権料だ。
もし開催されないと巨額な放映権料が得られず、たちまち五輪運動は窮地に陥る。
というわけだ。

実際、NBCユニバーサルは1988年ソウル五輪から全米での放映権を独占し、
2032年までの夏冬6大会に76.5億ドルを支払うことになっている。
確かにそれ相当の金額である。
もし、放映権料がなくなればたちまち五輪運動は窮地に陥る。
しかし、NBCユニバーサルも馬鹿ではない。
それだけの金額を投資するのは、それだけの自己利益を計算している。
プラス、彼らは五輪運動そのものの価値を共有しているからこそ投資する。
単なる見返りを求めるだけでない入り込み方をしている。

そもそもOBS(オリンピック放送機構)なるものができたのも、
五輪放送のNBCなどが持つ知見を有効に五輪放映に繋げるためであり、
単純に利益だけを求めているわけではない。

Olympic Marketing

お金儲けだけのためにNBCがIOCと組んでいると言い切るのは
人々には分かりやすいかもしれないが、間違いだ。
五輪のような精神性を問われなければならないものを
唯物的に解釈するのは馬鹿げているだろう。
耳に心地よく、見るに優しいものを人々は喜ぶが、
真実はそれとは別のところにある。

とは言え、流石にNBCも昨今のSNSの発展に黙しているだけでは済まないだろう。
これまで基盤になっていた従来のテレビチャンネルの前に人々は座らない。
むしろ、自由に競技種目が選べて見たい時に見れるストリーミングが関心を呼んでいる。
そうなると広告収入を前提とした放映権の基盤が脅かされる。
そこに選手たちが独自に発信できるSNSを許せば、これまでの独占的広告メリットも色褪せる。

コロナがなければ実現できた史上最大の観客数は夢のまた夢となり、
観客のいないスポーツ映像には全く別の価値が生まれる。
スポーツ自身の価値であり、その競技性(勝ち負けでなく、その競技の本質)が問われることになれば、観客に頼ってきたこれまでのマーケティングは心細い。

テレビ放映権以外の大きな収入であるのは、
1988年から本格化したTOP(The Olympic Marketing Program)
であり、これまで絶対不可侵であったオリンピックシンボル(五輪)の
商業利用によるその対価を得る活動である。
それは一業種一社の原則により、先鋭化し、オリンピックを支援することが唯一無二の存在を定義することになり、それによってその企業価値が半永久的になる。
しかし、この行き方も今や限界と捕らえられ、東京2020のローカルスポンサーシップは一業種一社の原則を破らざるを得なかった。
その背景にはSNSによる五輪競技の独占解放力があると見る。
企業と五輪が結びつくには、SNSの拡散が邪魔をする。

こうなるともはや1984年ロサンゼルス五輪が作ったオリンピックマーケティングのやり方自信を根本から反省して改革するしかなくなる。

五輪という知的財産を商業化すること自身への疑問がその根本的問いかけになる。

私は初めて身内の介護に直面しているが、この介護という言葉が
ある人物が作った近年の造語であることはあまり知られていない。
今や介護ビジネスはなくてはならない社会内存在であり、
この介護という言葉を作った人が、その言葉を商標登録していれば、
介護ビジネスが進展すればするほどその人に利益が転がるシステムを
作ることができた。
しかし、その人は「介護」を商標登録しておきながら、
そのビジネスの公共性を重んじ、ロイヤリティをフリーにしている。
恐ろしい?!人物である。
その方は私の知る人でもあるフットマーク株式会社の磯辺会長である。
彼と出会ってしばらくしてその話を知り、ロイアリティの必要性を解いたが、彼曰く「それはそれなのです。介護は介助と看護を合わせた言葉なので」

今、IOCが学ぶべきは、この精神ではないだろうか?
オリンピックを独占的に所有するIOCがオリンピック運動の価値を
本当に広めるために、オリンピックマーケティングがその精神を
普及するために、その著作権をフリーにすると言うあり方である。

それによって現代社会が必要としている介護ビジネスが、
隆盛しているように、様々なところでオリンピック運動が
ビジネスとして展開される可能性ができると言うわけである。

IOCが管理するのはそのビジネスが真のオリンピック精神を敷衍しているかどうか?その判断である。

オリンピックシンボルの対価を求めず、只管スポーツによる世界平和構築を唱えるIOCであれば、オリンピックを利用したビジネスで利益を得た企業も黙ってはいまい。

オリンピックのために最大限の支援を提供するのではないか?
あたかもNBCユニバーサルのように

(敬称略)

2021年9月29日

明日香 羊

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編集好奇
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私はしばしば「綺麗事を語る人」と言われる。
確かに。
しかし、きれいなことは求めたい。
いつでも、どこでも、何があっても
きれいなことを求めたい。
オリンピズムは終わらない。
次号はなぜそこまでオリンピズムを唱えるか?
について戦争論からスポーツ思考したいと思います。

春日良一

【Forbes Japan】
いま改めて考える「聖火リレー」の意味と歴史
https://forbesjapan.com/articles/detail/39557

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考?ご期待
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次号はvol.439です。

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「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
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NHK大河「いだてん」を思考すると題して始めたブログ
「純粋五輪批判」
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哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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