本当の「ぼったくり男爵」は誰だ? 〜なぜアストゥリアス皇太子賞受賞の朗報を共有しないのか?〜
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本当の「ぼったくり男爵」は誰だ?
〜なぜアストゥリアス皇太子賞受賞の朗報を共有しないのか?〜
10月28日、「スペインのノーベル賞」とも呼ばれるアストゥリアス皇太子賞の今年の授賞式が、アストゥリアスのオビエドで開かれた。坂茂(ばん・しげる)(65)が8部門のうち平和賞に当たる共存共栄部門で受賞した。
この賞はアストゥリアス王太子財団(Fundación Príncipe de Asturias)が1980年に創設。受賞者には、ジョアン・ミロによる彫像と、賞金5万ユーロが寄与される。
坂の受賞は、建築を通じ世界各地の避難民や被災者への支援を続けていることが評価されたものだ。スペイン国王フェリペ6世の長女レオノール王女が賞を授与し、国王は演説で「坂さんは建築の理解と最も苦しんでいる人々への連帯に関して見事に先頭を走っている。寛容な行動に感服する」と称えたと共同通信は伝えている。
坂は共同通信のインタビューに応じ、ロシアのウクライナ侵攻による避難民支援で来年3月にも同国西部リビウにパネル型復興住宅を試作し、各地での利用につなげる計画を進めていると語っており、今後の平和貢献が期待される。
しかし、この同じ賞のスポーツ部門で、オリンピック難民財団とオリンピックの難民選手団が受賞されたことについては、日本のメディアは全く取り上げていない。
昨年、東京五輪開催を巡って、新型コロナウィルス感染拡大の中、開催意義を主張し続けるオリンピックのリーダーであるトマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の日本での評判は低下し、IOCに批判的な言動が繰り広げられた。ワシントンポストのコラムがあたかもバッハが開催地から利益だけを得て、開催地の不幸を顧みない嘗ての欧州貴族のようだと書くと、「Baron Von Ripper-off」を共同通信が訳した「ぼったくり男爵」はその年の流行語大賞トップ10入りし、授賞式に出席した渕野新一同社副部長が「ぼったくり男爵はワシントンポスト紙のコラムで、紹介する記事を書いた際に和訳したものです。支局の同僚が、語呂良く訳してくれて、当時モヤモヤした思いを抱いていた日本人にも響いたのだと思います」などと手柄話を披露する有様だった。
五輪の125年を超える歴史の中で、IOCが「ぼったくった」史実は一切ないし、よく批判の対象になる新設された競技会場の後利用については、今年の3月、IOCが執拗な多年に亘る調査結果を発表し、第一回大会が開催された1896年以降の全大会について、85%が後利用されている証拠を明らかにしている。この報道もまた日本では無視されている。
それでも一向に私は構わないが、このまま本当のオリンピックやIOCの動向に目を向けず、ネガティブな自己判断を続けていくと、やがて日本のスポーツ界は愚か、日本社会が世界から取り残されていくことになると警鐘する次第だ。
坂茂の緊急時シェルターのデザイナーとしての貢献は阪神淡路大震災やルワンダ難民のシェルターにおいても偉業であるが、同じく1994年以来、国連高等難民弁務官事務所との協力体制を敷き、スポーツを通じて難民支援を続けてきたIOCが2016年に初めて難民選手団をリオ五輪の舞台に参加させ、以来、そのチーム編成のために世界各国のオリンピック委員会と協力して難民支援を続けてきた貢献も無視されるべきものではない。
坂を称えた国王はオリンピック難民基金とオリンピック難民選手団について、「スポート(*)、至高の競技、そしてオリンピック運動が世界の人々が強いられている厳しい現実を想起させ、反省させ、そして宥めてくれている。難民という言葉は我々にとって深い絶望である。難民は自らの力の及ばないところで、全てを失い、故郷を去らなければならないのだ。我々は彼らが希望を抱くように団結を求められている。それを実践しているのがオリンピック難民基金であり、オリンピック難民選手団なのだ。難民になった選手たちがトレーニングし、競技に参加できるように支援が続けられている」と力説した。そして、同席していた東京五輪に難民選手団として参加したEldric Sella(ボクシング)と Masomah Ali Zada(自転車)を励まし、同じく臨席したバッ会長の「彼の支援と指導力そして精力的尽力」に感謝した。
対するバッハは「オリンピックに夢を抱く若者たちの思いを実現するために努力を続ける。2016年リオ大会で初めて編成された難民選手団だが、このプログラムはトップ選手だけに限られたものではない。2024年までには百万人の難民の方々がこのプログラムの恩恵に浴する事を目指しています」と述べた。
またロシアのウクライナ侵攻に対しても、IOCはウクライナの選手3000名以上を支援しており、2024年パリ五輪、2026年ミラノ・コルチナを見据えて、総額750万ドルの義捐基金を設立した。
バッハのどこが「ぼったくり男爵」なのだろうか?なぜ、日本のメディアからバッハやIOCについてのポジティブな情報が伝えられないのだろうか?共同通信が伝えていて、メディアが報じないとすれば、彼らは朗報を「ぼったくった」のである。その情報は非常に価値の高いものに思える。共同通信は流行語大賞の名誉も「ぼったくった」のだから、日本のメディアは二重の「ぼったくり男爵」ということにならないか。
(敬称略)
2022年10月31日
明日香 羊
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編集好奇
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文中の「スポート(*)」は注釈が必要ですね。
日本ではSPORTもSPORTSも「スポーツ」となっています。
しかし私の知るところではSPORTとSPORTSは全く異なる概念です。
前者は簡潔すれば、身体運動の哲学的理念の総称であり、後者は競技。
詳細は別の機会に譲りますが、日本がオリンピックに参加し始めた頃は、
関係者はSPORTをきちんと「スポーツ」と言わず「スポート」と言っていました。
そんなことを知らない現代の知識人たちが体育協会をスポーツ協会に変えて
進化したと思い込んでいるのです。
それが今の日本スポーツ界の現状です。
春日良一
『NOTE』でスポーツ思考
https://note.com/olympism
ゲンダイdigitalにアントニオ猪木さんへの追悼文を寄稿しました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/312253
【ダイヤモンドオンライン】
NEW!!
東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり、元JOC職員が見た真因とは
https://diamond.jp/articles/-/311042
北京五輪の「オリンピック休戦」をむげにしたロシア、
IOCバッハ会長の葛藤
https://diamond.jp/articles/-/298005
【ゲンダイデジタル】
【特別寄稿】IOCバッハ会長は8年前、高橋治之元理事の“追放”を組織委に求めていた
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/310969
特別寄稿!
「逮捕された高橋治之元理事には9億円 あぶり出される東京五輪招致の闇」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/309953
短期連載(全3回)
「東京五輪にメス!スポーツマフィアを生んだJOCの過ち」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4389/495
短期集中連載(全5回)
「IOCへの諫言 五輪憲章から矛盾を糺す」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495
日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658
【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575
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考?ご期待
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次号はvol.470です。
スポーツ思考
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日刊ゲンダイ連載全100回
「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3625/
NHK大河「いだてん」を思考すると題して始めたブログ
「純粋五輪批判」
https://genkina-atelier.com/gorin/
哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説
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コメント
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円安のように
その通り。
「ぼったくり男爵」の語をテコのように上手く使って
逆転している論調が見事。
日本人、本当に視野狭窄で、独りよがりにいい気になっているうちに
世界での評価が没落しますね。
円安のように。