2025.04.10
カテゴリ：オリンピック
プーチンもコベントリーへと靡く道 〜和して同ぜずの術〜
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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.525
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Sport Philosophy
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プーチンもコベントリーへと靡く道
〜和して同ぜずの術〜
国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）バッハ会長が第１４４次ＩＯＣ総会の開会スピーチで「ピエール・ド・クーベルタンによって（オリンピックが）復活するまでには、約2000年もの時を要しました。彼がこの偉業を成し遂げたのは、わずか２９歳の若さでした。彼の思考の中心には、常にスポーツの価値がありました。彼はスポーツとその価値観を通じて、より良い世界を築こうと考えました」
とクーベルタンがオリンピック復興という偉業をなした若さを強調したが、ＩＯＣ創設時のクーベルタンの年齢は３０もしくは３１歳であったはずで、この矛盾について私はＩＯＣに問い合わせていた。
オリンピック研究センターから回答があった。
１８９４年６月２３日のＩＯＣ創設の２年前の１１月、フランススポーツ競技連合（ＵＳＦＳＡ）創設５周年記念式典の場でクーベルタンが初めてオリンピック復興計画を発表した記録があった。１８６３年元旦生まれのクーベルタンはその時２９歳であった。というのだ。
バッハが自信をもって「２９歳」と言った根拠は確かなものであったということになる。
先の第１０代会長選挙で最も若かったコベントリーが選ばれたのはオリンピックの「若さ」を象徴しているようだ。時代の精神を先取りしているとも言える。
バッハは７０歳という定年を意識してコベントリーに道を開けたが、政治の世界では７２歳のプーチンと７８歳のトランプが顕在である。二人は世界を支配しているような勢いだが、ちっとも世界は明るくならない。トランプの威勢がウクライナ戦争もガザ紛争も止めるかと一時は見えたが、老人性遅延症候群か遅々として和平は進まない。
こうなるとコベントリーに世の中を変えてもらいたいところだ。しかし、そのコベントリーに期待を抱いているのがプーチンという何とも皮肉な現象が生じている。
ウラジーミル・プーチンはカーティス・コベントリーがＩＯＣ会長に選ばれると早速、祝福の言葉を伝えたのである。
「投票結果は、スポーツ界におけるあなたの高い権威と、あなたの目覚ましい個人的業績が認められたことを反映している。私は、あなたのユニークな経験と、崇高なオリンピックの理想を真に推進することへの思いが、このような責任のある地位でのあなたの成功に貢献すると確信しています」と
当選の数時間後に「ロシアから愛を込めた」手紙が届いたというのだから、プーチンの五輪愛はかなりのものだ。
ロシアのスポーツ大臣であるミハイル・デグチャレフもまた、将来のIOCのリーダーにプレッシャーをかけた。彼女の輝かしいスポーツキャリア、オリンピックでの勝利、記録、スポーツの発展への貢献を称賛し、何よりも「オリンピック・ムーブメントがより強く、より独立し、より繁栄し、ロシアがオリンピックの表彰台に戻ってくる」期待を語った。「私はいつでもローザンヌに飛べる。今後数週間のうちに会談ができると確信している」と熱い。
狙いはロシアのオリンピック復帰である。
五輪休戦を破ったロシアがミラノ・コルチナ冬季五輪に出場できるか否か？後、３０２日後に開幕するのだ。
コベントリーは「どのようにアスリートを保護し、サポートするのか。すべてのアスリートがオリンピックに参加する機会をどのように確保するのか？そして、最終的にはすべてのアスリートが代表になるようにすることが、私たちの運動にとってより良いことなのです」と言い切っているが、しかしバッハ体制が下した苦渋の決断、中立の選手であれば個人参加が可能という基準を凌駕する施策が示せるのか。
もしロシアの復帰を果たすとしたら、プーチンに如何にして五輪休戦破りの禊をさせるか？の厳しい覚悟が求められる。少なくともこれから決議されるミラノ・コルチナ冬季五輪並びにパラリンピックの五輪休戦を守らせることが必須である。
コベントリーの会長職は今年のオリンピックデーからだが、重要案件についてはそれ以前でもコベントリーの意見を優先すると言っている。国際アイスホッケー連盟は、この問題が今月中に解決されるのを待っている。ロシアチームを大会に参加させるか、それとも他のチームをドラフトで参加させるかを決めるのを急いでいる。時間は刻一刻と迫っているのだ。
コベントリーは責任を取れる力を示す必要がある。彼女にはバッハができなかったことをやり遂げる可能性がある。プーチンが五輪休戦を破って以来、バッハはプーチンと断絶した。プーチンはＩＯＣ批判を始めた。しかし、今、そのプーチンがコベントリーに近づこうとしているのだ。崇高な五輪理念を取り戻そうと呟きながら。
コベントリーに求める。「和して同ぜず」
世界平和構築のために。
（敬称略）
２０２５年４月１０日
明日香 羊
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編集好奇
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IOCは４月９日に2028年のロサンゼルス五輪で、女子選手の出場枠が史上初めて男子選手を上回ると発表。
トランスジェンダー選手の女子競技参加を認めないトランプをコベントリーに靡かせる秘策だと見るのはいかがだろうか？
IOC会長選 7候補マニフェスト完全採点
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/5241
IOC会長選挙の結果についてゲンダイでも論じました。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/369469
コベントリーの勝利にプーチンが反応しました。融和外交に入っていくか？
「２０２４パリ大会 徹底、実践五輪批判」日刊ゲンダイ連載、全１８話
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4728/495
Forbes Japanで開会式について五輪アナリスト春日良一が分析。詩的スポーツ思考。
https://forbesjapan.com/articles/detail/72709
YouTube Channel「春日良一の哲学するスポーツ」は下記から
https://www.youtube.com/@user-jx6qo6zm9f
オリンピックやスポーツを考えるヒントにどうぞ！
『NOTE』でスポーツ思考
https://note.com/olympism
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次号はvol.526です。
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