川杉収二の死と日大アメリカンフットボール問題 ~仁義なき戦い~

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週 刊 ス ポ ー ツ 思 考 vol.382
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川杉収二の死と日大アメリカンフットボール問題
~仁義なき戦い~

この5月10日親分が死んだ。親分とは川杉収二(元日本オリンピック委員会理事)のことで、我々は彼を自然と親分と呼ぶようになった。我々とはあるジャーナリストたちと私のことで、総勢4名である小さな会を作っていた。日本オリンピック委員会(JOC)引退後の川杉は悠々自適ではあったものの、スポーツ界への思い捨てがたく、心根の知れた我々を集めて日本のスポーツ界を論じていたのだ。

東京五輪の開催準備などの在り方を見ていて、JOCがないがしろにされている姿が悔しくて仕方なかったところがある。
川杉は親分肌というわけではないが、上背もあり強面、めったに微笑まないその人相から、初対面の者は恐らく誰でも一歩引いて向かう感じだっただろう。その力?!を十分に発揮して、JOCの日本体協からの独立も新生JOC事務局の設立も一人でこなしたと言ってよかった。その功績を称える紙面がなく残念な思いがある。私は体協時代に総務勤務で一緒になり、同時に体協の労働組合企画部で共に活動した頃から、親しくなった。思えば37年の付き合いであった。

JOCでは堤義明(元コクド会長)の信頼を得て、彼の差配で様々な改革を行った。暴れん坊?!の小生のことをなぜか信頼してくれ、長野五輪招致の時も、彼の庇護があったから、思い切りのディールができたと言ってよい。トップダウンで時には強引な手を使ってでも事を成し遂げる手法を良く思わぬ役職員もいたが、一度信頼を寄せればとことん面倒を見る性分に惚れる人々も多かったはずだ。

今やJOCでは職員から事務局長が登用され、そのまま理事に就任するのが当たり前になっているが、そのポジションはかつて文部省の天下りが垂涎の地位だった。体協も同様で、体協の労働組合「体協職労」の目指すところの一つに体協職員からの事務局長登用と理事への就任があり、それによってスポーツ振興の事業を草の根から改革推進していくという理念があった。「天下り反対」はしかし見果てぬ夢というのが、当時関わった職員たちの本音であっただろう。その長年の夢を実現し、結果的に天下りを阻止したのが、川杉収二だった。「この男ならば」と役員たちに思わせて、たたき上げの事務局長となった日本スポーツ史上初めての人物とも言える。

彼の葬儀が営まれたのは5月15日。弔問には竹田恒和JOC会長が訪れ、弔電には麻生財務大臣の名があり、供花にはスポーツ界の重鎮の名も見えたが、彼の功績からすれば謙虚な葬儀だった。そんな中、通夜に訪れた時、葬儀場のホールに一台の黒塗りの車があった。誰のものだろうと思っていたら、日本大学理事長の田中英寿の姿があった。田中理事長はかつてJOC副会長ではあったが、なぜ彼がそこまで足を運んだのだろう。日大アメリカンフットボールの暴力タックル問題が世間を賑わせていた。スポーツ関係の記者たちの弔問も多い中である。

実は、川杉は田中と日大の同期、田中が日大相撲部時代にはそれほど親しくはなかったが、体協に入り、国体担当となり、日本相撲連盟の重鎮となった田中との親交が始まった。JOCが1989年に独立し、1991年の完全独立で川杉がJOC総務本部長に就任し、JOCの役員人事に関わるようになったところで、田中との繋がりが強いものになった。大相撲はともかくアマチュア相撲は団体として強力でもなく、オリンピック競技でもない中で、川杉は田中をJOCの理事に抜擢する。抜擢するというと語弊があるが、実はJOCの会長選も含む役員改選の調整は事務局の仕事で、なりたい人々ばかりの中から、JOCの普及発展のために適切な人材を選ぶ工作は川杉でなければできない仕事であった。

「俺の仕事は二年に一度の役員人事をきっちりやることだ」と明言するほど、彼はこの仕事に心血を注いでいた。

私がJOCを辞めるきっかけになったのは、当時の専務理事との抗争だったが、その専務理事(以下A)も日大所属で、私が法的に勝利しつつもJOCを去った1995年の後、この専務理事が会長のポストを狙って暗躍したのを阻止したのも川杉で、その際、川杉のために働いたのが田中であった。当時のJOC会長は誰もが認める古橋廣之進(フジヤマのトビウオ)で彼も日大の教授であったが、彼の後継を巡る争いである。AはJOCの会長ポストを狙うとともに日大の役職も狙っていたという。その中で、田中が川杉の意を汲みAを潰し、八木祐四郎(スキー連盟)の会長就任に漕ぎつけた。1999年のことである。

一方でこの作業の中で、田中は日大内での力もつけたようで、同年、日大の理事に就任している。その後、JOC副会長にもなり、川杉との親交は続いていた。既に定年により、71歳の田中はJOCの現職を退いているし、JOC自身にその力を固辞することはしないできた。彼は川杉との仁義を貫いていただけであり、JOC会長のポストにも全く興味を示したことはなかったと言う。

日大理事長のポストがどれだけ力ある地位かは、計り知れないが、それを推し量る事例として私の経験の一つを記す。実は私が体協に入社した時のJOC委員長(当時は体協内委員会の位置づけ)は柴田勝治(ボクシング)で、当時の日大理事長。1986年ソウルで開催されたANOC(国内オリンピック委員会連合)の会議に柴田委員長のカバン持ちで出張した私は驚かされた。成田空港のカウンターでは赤じゅうたんが敷かれているし、ソウルに付けば、大使館の出迎えで通関フリー。しかも、それはJOCが手配したものでなかった。

そのような権力がある人がJOCの頂点に興味がないのは自然だろうが、しかし、日大の頂点にはこだわるだろう。

今、問題となっている日大アメリカンフットボールの暴力的なタックルについて、衆目を集めている内田正人は日大のナンバー2と言われているが、絶大な権力を有する田中理事長の配下にあることはまちがいない。彼が結果を出すために手段を選ばない方法をとったのも推測できる。親分にいいところを見せなければならないと選手を子分のように使うという構造である。子分がその始末を親分に相談した場合、親分はどうするか?子分に責任を取らせるか?守るか?

日大とJOCでは比較対象にならないが、川杉流生き方は、自分の気に入った人にはとことん尽くす、自分を頼ってきたもののためには、とことん面倒を見る。である。そこには、正義か不義かではなく、義理よりも人情を重んじる世界がある。彼の場合だったら、どんなに子分が間違っていても守るだろう。

だからもし参謀が信頼を得て、正義と不義を判別して、その方向に親分を導いていけるほどのものであれば、この体制でもそれなりに良き運営ができるのだが、もしその参謀が自らの功績を重んじて、暴走すれば、その暴走を親分がカバーするという方向に行って収拾がつかないという事態に陥る。
親分は子分が間違っていればそれを諭し、外に向かっては自らが責任を取る必要がある。それが仁義である。

今の日大アメフト問題は、仁義なき戦いの構造ではないか?
誰一人、義のあるものがいない状態だ。

かつてJOC事務局に有名選手が就職した。川杉にある国会議員から選挙に協力してもらいたいとの依頼があった。その議員はスポーツ界に力があり、JOCのためにも良い関係を維持したいと思った彼は、その選手を応援演説に派遣することを決めた。その時、選手から相談を受けた私は、川杉に談判した。オリンピック運動に情熱を燃やしてやってきたオリンピアンを政治的な活動に使うのは言語道断である。やめなければJOCの独立した意味もない。と。川杉は「分かった」と言って、議員に侘びを入れた。

スポーツ管理は選手第一主義であるという原点に帰れば全てが明白である。
責任を取るべき監督が全てを自らの罪として、切腹する武士道を選ばず、選手を犠牲にして生きる道を選ぶ有様は、見るに忍びない。

田中理事長が、川杉収二の御霊にスポーツの誠をささげるのを期待する。

それが仁義なき戦いに幕を引く唯一の道であると私は思う。

(敬称略)

2018年5月26日

明日香 羊
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編集好奇
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川杉さんの死を悼みます。闘病中何度か見舞いに行きましたが、最後、死の1月ほど前に訪れた時には、かなりやせ、身動きもままならず、驚きました。食事もとらないというのでしたが、私が口に運ぶと食べてくれました。帰る時に「もう帰るのか?」といいつつ、見たこともない笑顔を見せてくれました。その笑顔が形見です。弔問に訪れたある団体幹部の方から「川杉さんが言っていました。カスガはJOCの宝だと」「えっ」「本当ですよ!」強い言葉だった。俺は俺を一番認めてくれた人間を失ったことを悟りました。随分面倒を掛けました。許してください。川杉さん、ありがとうございました。

春日良一

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考?ご期待
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次号はvol.383です。
(1998年からの400号を目指して あと18思考?!)

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コメント

  • 腹を切れないトップ

    トップは首相から果てはアメフットの監督まで、部下のために腹を切れない
    “腰折れザムライ”がここのところ急増したということ。
    まるで日本人の道徳観の断層が出現したように。

    「自己責任」と「連帯責任」ということを忘れ、(マスコミのための)「説明責任」と

    (丸投げの)「第三者委員会」とやらに先延ばしを図る輩が急増したということ。

    後は田中理事長に、武士道の最後の残り火が残っているかどうか?



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