選手強化体制が問われている ~体操協会のパワーハラスメント問題の意味~

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選手強化体制が問われている
~体操協会のパワーハラスメント問題の意味~

選手強化指定選手の宮川紗江が長年指導を受けてきた速見コーチが
日本体操協会から無期限の登録抹消などの処分を受けたことに対して、
協会副会長の塚原光男と女子強化本部長の塚原千恵子のパワーハラ
スメントがあったと記者会見で明らかにして以来、メディアはこの闘いに
焦点を当てている。

私自身もテレビを含め一部のメディアで背景の解説や批評をする機会が
あったが、双方のメディア戦が過剰なまでにヒートアップしていることは否
めない事実である。

画像の説明

これによって、これまでスポーツのカーテンに遮られていた体育行政の中
身が明るみに出て、ある意味スポーツアドミニストレーション(スポーツ運営)
の健全化に貢献するかもしれない。

伊調選手とレスリング協会、ボクシング連盟と山根明、改革派が成功を
納めている。一昔前には考えられなかったことではないだろうか?私自身
今から24年前にはJOC体制派と闘ったが、ここまでメディアが取り上げる
ことはなかった。

いずれにしろ、これまでの騒動の本質にはアマチュアスポーツ連盟の抱
える本質的な問題があり、そこが深層の真相だ。どんな議論もどんな報
道もそこに目を向けなければ、実は何も意味がない。

アマチュアスポーツは、「ボランティア」の役員に頼らざるを得ない組織で
ある。その競技が好きで好きで堪らないでその運営に自らを捧げる人間
が支えてきた。アマチュアスポーツ団体の長になったからと言って金銭的
なメリットは何もない。もちろんその地位によってさまざまな特典は得られる
が、尽くした時間に対してそれが相当対価になるほどのものはないだろう。

山根元会長の特別椅子は有名になったが、その程度だ。尽くしても得ら
れない対価については、成績というご褒美こそ至高の対価である。レスリ
ングの栄は育てた選手のメダルで十分報われた。山根も同様だ。そして
塚原夫妻はまさに東京五輪で女子体操のメダルという対価を受け取るは
ずだった。

東京五輪2020で表彰台に上るのは選手だが、その選手を育てた協会
のその時のポストにいるか、いないか?アマチュアに尽くしてきた人々が
どうしても欲しい名誉である。このところ続く内部告発は、現体制ではその
地位に就けない人々の起こした一揆と言ってもいいだろう。

冷静に今年のレスリング、ボクシング、そして体操の騒動を見ていれば、
そういうスポーツ界のうめき声が聞こえてくるはずだし、今後もアマチュア
競技団体では連鎖的に出てくる可能性があるだろう。メダルが取れそうだ
けどこのままでは?と思っている勢力が動く可能性がある。

選手強化対策は文字通り選手を強くするための策であるから、そのプラ
ンは大胆な方針と適切な手段が必要である。今から40年も昔になるが、
日本体育協会(体協いまスポーツ協?)にあった競技力向上委員会が、
研究調査に真剣に取り組み、ドイツのゴールデンプランやアメリカの強化
策など世界各国の成果を取り入れながら「21世紀プラン」を作った。それ
が理想的な日本のスポーツの強化策になるはずだった。

しかし、1991年JOCが体協から独立する時の人事抗争で、このプランの
最大の功労者であった福山信義競技力向上委員長が外され、リーダー
を失った「21世紀プラン」は霧散した。その霧を集めて構築されたのが、
実は「Jリーグ100年構想」である。Jリーグの成功の陰に実は水泳出身の
福山の貢献があったということになる。

黎明期の女子レスリングに日本レスリング協会の福田会長は目を付け、
栄コーチに丸投げした。女子の選手強化は栄の築き上げたものである。
彼の努力が花を開き、女子レスリングも普及する。普及し、世界も女子レ
スリングに参入してくれば、当然その選手強化策も新しいものにならなけ
ればならない。その提案が伊調馨の反抗であった。

同様に、塚原夫妻の女子体操の選手強化策は奏功し、北京、ロンドン、
リオと続いた。しかし、メダルには届いていない。そこで東京五輪2020
に向けた強化プランができたが、その中身に矛盾点があった。「選手強
化選手がそこに入らなければ五輪に出場できないわけではない」という
プランは果たして五輪への強化プランになるのか?

東京2020を目指すのならば、東京五輪に出場するためにそこに入らな
ければならないプランでなければならない。恐らくこのプランを決める段
階で選手強化本部の反対勢力から、入らなくてもいい自由枠を求めたの
ではないか?いずれにしろ、このプランの欠陥を残す運営が、今回の宮
川革命に結びついている気がする。

伊調は表に出ずに、女子レスリング強化体制を改革する方向に導いた
が、宮川は自らが表にでて、体操協会の選手強化体制に反旗を翻した。
塚原か宮川か?という論点でこの問題が論じられるわけにはいかない
経緯は上記のとおりだが、それの解決策はどこにあるか?

それが上述の「21世紀プラン」である。現在このプランを知る者もいない
かもしれないが、その根本はJリーグ百年構想に受け継がれている。この
霧散した提言を紐解き、自らの競技経験、コーチ経験によって肉付けし
てきたのが、1991年以降の日本の各競技団体の流れであったと見る。

そして、今年スポーツ界に起きている問題は、パワハラの告発であるが、
すべてそのゴールは選手強化体制の見直しなのだ。とすれば、その解
決は選手強化の根本をその統括責任者であるJOCが示すことだ。朝日
生命体操クラブを第二のナショナルトレーニングセンターとして認めたと
すれば、そのプランの整合性もJOCが保証しなけければならない。

選手保護の立場からJOC選手強化本部が今動かなければならない。そ
の本部長は山下泰裕である。先般のアジア大会におけるバスケットボー
ル選手の行動規範逸脱には厳しい判断を以って臨んだが、まさに今、
選手が声を上げた問題の本質に選手強化対策そのものがあることを見
極めて、施策を行動に移しすことを望む。

1964年の選手強化本部副本部長の大島鎌吉は、全競技の選手強化策
を指揮し、「15個の金メダル」を約束した。結果は16個だった。

(敬称略)

2018年9月11日

明日香 羊
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編集好奇
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JOC時代は苦手の選手強化でした。メダルの先にあるゴールを目指す
競技力向上を求めたいですね。そういえば「競技力向上」という言葉を
作ったのも福山さんだったのかもしれない。選手を強化するのではなく
競技力を向上させるのである。

春日良一

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考?ご期待
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次号はvol.389です。
(1998年からの400号を目指して あと11思考?!)

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