電通の無情あるいはJOCの罪 〜高橋治之を生み出す構造〜

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電通の無情あるいはJOCの罪
〜高橋治之を生み出す構造〜

東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事(78)が2017年秋以降、自身が代表を務める会社と大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」(横浜市)側の間でコンサル契約を結び、AOKI側から4500万円超を受け取っていた疑いがあることが関係者の話でわかった。理事は「みなし公務員」で職務に関する金品の受領を禁じられている。東京地検特捜部も同様の事実を把握し、コンサルは実態に乏しく、高橋氏への資金提供だった疑いがあるとみて慎重に捜査している。(読売新聞オンライン7/20(水) 5:03配信)

AOKI 2022-07-20 22

一歩引いて見つめてみれば、東京五輪2020は高橋を利するために開催されたと言えなくもない。それは招致段階からそうであった。五輪の魂を失った日本オリンピック委員会(JOC)には、資金繰りもイベント運営も、広報も、企画も、メデイア操作も国際スポーツ界と渡り合っていく器量はもはやなかった。そのような状況で体面を保ちつつ、屋台を支えるとなれば電通に頼らざるを得なかっただろう。

モスクワ五輪ボイコットの棘を抜くべく、JOC独立を目指し、堤義明の政治力を使い、スポーツ自身の力で経済的基盤を確立し、それによって自律した日本スポーツ界を構築する夢を果たしたのが1989年。1991年の長野五輪招致成功はその道の標であるはずだった。1986年以来、アディダスの築いた国際スポーツ情報網を頼りに、共に築いたISL社にスポーツマーケティングを独占させ、世界支配を狙っていた電通を利用しない手はなかった。しかし、あくまでもJOCの理念を実践するための手段としてであった。それが私のJOC改革の骨であった。

電通を使うことと電通に投げることとの違いをJOCは解らなければならない。

私がJOCを去った後、国際スポーツ戦略の場面で、JOCが電通に頼らざるを得ないことは分かっていた。が、そこにそれまでスポーツとは無縁の高橋が出てくるとは想定外であった。その経緯はジャーナリズムに任せるが、私が言えるのは、高橋は自分の利益のためにオリンピックに参入したということだ。

それが論より証拠には、東京五輪2020の招致に多額の資金が動く。それを可能にしたのが高橋である。招致委がエージェントや個人などに支払った活動費の明細一部が極秘に入手できたが、驚くべき金額だった。メディアでは高橋は「日本のスポーツビジネスを変えた男といわれるほどの大物」などと紹介されているが、私からみれば、電通で行き場がなくなり、スポーツビジネスに自らが生き残る活路(食い扶持)を見出したというのが本当だと思う。その時の蜘蛛の糸がJOC前会長の竹田恒和であった。彼がオリンピックの世界に入り込めたのは竹田JOC会長実現時のある工作の縁に過ぎない。受け入れる側のスポーツ界はカネを持ってきてくれる電通の人であれば誰でも良かったのだ。

2016年5月、日本から振り込まれた買収資金で、アフリカ出身の国際オリンピック委員会(IOC)委員の票を獲得する工作疑惑について、ラミン・ディアク元IOC委員(国際陸連前会長)が関与しいていたことを英国の新聞が報じ、ディアクを別件で捜査中のフランス司法当局が調べ、東京五輪2020招致の買収疑惑に及んだ。開催都市は約100名いるIOC委員の投票によって決まるが、浮動票と言われるアフリカ票が決め手となる。

東京五輪招致委は、ディアクの子息が関与した「ブラック・タイディングズ社」の口座に、コンサルタント料として200万ドル相当額を送金したことを明らかにした。ブラック社の代表は電通の系列会社の関係者だった。招致当時、招致委の理事長だった竹田(JOC前会長)に同社を紹介したのが他ならぬ高橋で、その高橋は、自社に招致委から820万ドル(約9億円)を受け取っている。電通は招致委に寄付として6億7,000万円を振り込んでいるが。

この件は国会でも取り上げられ竹田は疑惑を否定していたが、結局JOC会長を辞任、IOC理事会も推定無罪としていたが竹田はIOC委員も辞任した。高橋はどこ吹く風と東京五輪組織委理事を続けた。その職になければ得られない利権を簡単に放棄する輩ではない。高橋は「ディアクにセイコーの腕時計やデジタルカメラなどの贈り物をしたが、賄賂を渡すなど不適切なことはしていない」とロイターに答えた。しかし、それ自身が、今のIOC倫理規定ではNGである。

ディアクは2021年12月に死去した。2014年に発覚したロシア陸上界の組織的ドーピング疑惑を巡り、国際陸連会長当時の収賄や資金洗浄の疑いでフランス司法当局の捜査を受け、2021年1月の一審判決で有罪を宣告されていた。東京五輪2020招致疑惑は迷宮入りするのか先行きが見えない。

東京開催決定時には1兆円の売上をめざすと宣言した電通であった。五輪のスポンサーは約80社、電通一社が独占契約していた。しかしコロナ禍による延期と無観客でその目標には及ばなかっただろう。東京五輪2020は黒字を出せなかった。

しかし電通OBの高橋にはAOKIホールディングスから4500万円超が与えられている。「それはコンサル料だよ」と高橋は主張するだろうが、電通が損をしても高橋は儲けをいただく。組織委理事として大会の開催を主張していたのではなく、自分の利益のためにそうしていたのだと言われても仕方がない。思えば2020年3月、コロナで同年五輪開催が危うくなってきた頃、ウォールストリートジャーナルなどで「延期」を主張したのも高橋だった。

選手は四年に一度の一期一会に命を賭ける。そのために東京五輪は開催すべきと思った。人類の夢を実現する日本のためにもそう思った。私が何本もテレビ番組に出場し、日本の常識を的に回す悪役をあえて演じたのもそのためだ。

私は東京五輪2020は「コロナ禍で開催した」というそのことだけでも価値があったと言ってきた。しかし、選手たちの精一杯と感謝で東京五輪2020に与えられた名誉が、高橋によって危機に瀕している。そのことをはっきりと記しておく。

スポーツ界が電通を利用する、電通がスポーツ界に貢献する、それならばOKだ。しかし、電通のためのスポーツ、電通のためのアスリートは要らない。高橋治之の利権を出現させたJOCは反省しなければならない。

(敬称略)

2022年7月20日

明日香 羊

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編集好奇
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本文を執筆するに、明日香羊は「埋み火」とタイトルを考えました。
しかし、この字なかなかです。
まず読みが難しく、最初、「うずまび」「ウマズビ」とか、思い出せず。
立原正秋の「埋火」から、消えても消えない五輪魂を描こうとするのは無理でした。
次号以降に譲ります。

春日良一

(*)電通と私についてはこちらもどうぞ!

『NOTE』でスポーツ思考
https://note.com/olympism

【ダイヤモンドオンライン】
北京五輪の「オリンピック休戦」をむげにしたロシア、
IOCバッハ会長の葛藤
https://diamond.jp/articles/-/298005

【ゲンダイデジタル】
IOCへの諫言 五輪憲章から矛盾を糺す
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4322/495

日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575
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考?ご期待
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次号はvol.466です。

スポーツ思考
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日刊ゲンダイ連載!
「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3625/

NHK大河「いだてん」を思考すると題して始めたブログ
「純粋五輪批判」
https://genkina-atelier.com/gorin/

哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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コメント

  • 東京オリンピックの評価がきちんとされていない。JOCは反省すべきでしょう

    浅草の観音様には仲店があるように、寺や神社には門前町があり、ある程度は
    それにあやかる商売というものも、御利益としてゆるされるのでしょうが、あの程度の
    開会式しか演出できなかった電通が全てを一手に引き受けていたとか、その流れの
    男が賄賂を受け取っていたとなると、やはりJOCは根本から反省し、出直しが必要でしょうね。

    志のない者が、すべてを外部に丸投げにし、金だけを動かして体裁を繕ろわせる。
    やった事柄に関しての事後の評価も、次への改善点も打ち出されていないし、報告も
    されていない。(橋本聖子のコメント程度を「評価」とは言わない。)どうせ丸投げするなら、
    そこまで丸投げして電通に自己評価させ、JOCがそれを評価する。そこまで含めて
    彼らの仕事ではないでしょうか?

    これではスポーツがあまりに可愛そうです。
    五輪が終わって、早一年。膿をしっかり出し切って欲しいです。



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