オリンピックは政治の舞台 〜二つの中国問題〜

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オリンピックは政治の舞台
〜二つの中国問題〜

1978年に体協に就職した私にとって、中国は中華人民共和国であり、
中華民国ではなかった。当時のスポーツ界はそれまで竹のカーテン
で仕切られていた大国の扉が開かれ始めると、こぞって中国との友
好を求めた。政治的な壁はスポーツが媒介となり越えていった。

若造の私には体協理事会やJOC委員会で発せられる中国の国際スポー
ツ界復帰が自明の理として入ってきた。私は当初総務部に配属され
たので、理事会に事務局として庶務係で参席するのが常だった。そ
れが後々、オリンピズムを思考する時の身に染みた知財となってい
る。

大陸の中国がスポーツ界に復帰するために日本のスポーツ界はそれ
なりの貢献をしたと思う。IOCや国際競技連盟に働きかけていた。
理事会の議論はほぼ中国礼賛に近いものであった。しかし、同時に
中華民国とのスポーツ交流も大切にしようとした。それが日本スポ
ーツ界の立場だった。

オリンピックの世界では、中国はひとつではない。中国も台湾もそ
して香港もマカオも・・・などと表現したら、中国は怒るだろうが、
それぞれがそれぞれのオリンピック委員会を持っているという現実
がある。それが政治的な闘争を緩和する仕掛けになりうるとうのが
私のオリンピズムである。

しかして、現実は厳しい。

北京冬季五輪に参加するチャイニーズタイペイこと中華民国のオリ
ンピック委員会は、競技には参加するが、開閉会式には行進しない
らしい。理由は、大会組織委がチャイニーズタイペイの漢字表記を
中国台北にすることが分かったからだという。

中国でも中華でもいいじゃん!と思うのは中国文化圏外の漢字文化
圏、特に日本人である。中国の正式名称は中華人民共和国であり、
略せば中国だ。中華と略すこともできるのでは?とそう思ってしま
うのだ。

しかし中国に人々にとっては一大事らしい。

中国の友人たちに「中国か中華か」の問題を提起してみた。東大大
学院を卒業したWは中華五千年の歴史から紐解いてくれた。中華料理
屋を経営するLは一言で答えてくれた。端的に言えば、中国は国で、
中華は民だということだ。

思い起こせば天安門事件が勃発した直後、私は中国の朋友に電話を
して、今こそ五輪の御旗で民主化に切り替えるべしと熱弁したが、
受話器の向こうでは「わかるけど今はまずい」と押し殺した声がし
た。朋友は中国スポーツ界の中枢にいる人間だった。当時、2000
年の五輪をシドニーと争っていた北京にとって、この一件が致命傷に
なることを私は逆手にとって自分なりの五輪戦略を駆使しようとし
ていた。1989年のことだ。

その年の4月、中国オリンピック委員会と台湾オリンピック委員会
はトップ会談を香港で開き、中華台北とすることで合意した。北京
五輪実現のための布石でもあった。会談の主役は中国オリンピック
委員会の何振梁。IOC副会長でもあり、国際スポーツ界での信頼は
すこぶる高いものでった。対する台湾オリンピック委員会の李慶華
は中華民国のオリンピック委員会ともとれる中華を入れてくれた何
に恩義を感じたはずだ。

He Zinglang

この協定が、チャイニーズタイペイの中国表記の原典である。

それをこの北京冬季五輪で中国台北にすることになると、この協定
を覆すことにならざるを得ない。IOCがそれを認めたとすれば、IOC
は批判を受けざるを得ない。

それぞれの政治的な思惑を超えてスポーツで参集するのがオリンピ
ックであるならば、それが可能となる表記を模索すべきだろう。そ
の努力を積み重ねた結果の何振梁vs李慶華会談を反故にする必要を
感じない。

チャイニーズタイペイの開閉会式参加、不参加は、IOCの責任であり、
中国の責任である。

そろそろバッハも習近平にスポーツの力を見せる時である。

(敬称略)

2022年2月1日

明日香 羊

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編集好奇
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北京冬季五輪に参上するべく準備を進めていたが、直前で待ったが
かかった。完ぺきな閉鎖導線で運営されるので、頼むから理解して
くれという愛情溢れる最後通告をいただいた。北京は本気でコロナ
ゼロにするつもりだ。

春日良一

日本と世界の重要論点2022↓
【Daiamond Online】
東京2020が日本人の記憶に残らない理由、北京に引き継がれた不信感と意義
https://diamond.jp/articles/-/291658

【Forbes Japan】
「命と引き換えにするほどの価値があるのか議論すべき時」
https://forbesjapan.com/articles/detail/39575

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考?ご期待
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次号はvol.452です。

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「実践五輪批判〜20年東京五輪これでいいのか?〜」
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「純粋五輪批判」
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哲学者カントの純粋理性批判と実践理性批判から拝借
「実践」では実際に五輪がオリンピズムを実現しているのかを批判
「純粋」では大河を触媒にオリンピズムの本当を解説

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